Green THumber   第27号 平成12年11月4日発行



グリーンサムクラブ主催・『新時代の庭づくりトーク&勉強会』 レポート

2000/110/1 



"これからの庭・苫小牧だからできる庭"
〜花新聞・ガーデン塾で好評の政村悦啓さんを迎えて〜

暑くない苫小牧の夏。霧のない内陸のマチに比べ1ヶ月近くも遅れる夏花のピーク。でもこの涼しさが西洋期限の園芸植物に好都合。「庭づくりは土地土地の紙に聞け!」。風土をよく見知ったうえでしかできないアズマシイ庭を作り上げたい!…
心のこもった庭づくりをサポートする政村悦啓さんに苫小牧らしいガーデンパターンのヒントを提示てもらおうと、グリーンサムクラブ主催の「勉強会&庭づくりトーク」が去る10月1日、サンガーデンで行われました。以下、内容を要約してお伝えしましょう。

●庭づくりのながれ

30年前に造園業を始めたときは日本庭園でした。当時は、洋風の芝や花壇はプロのやるものではない、と考えていましたがこれは大きな間違いでした。ランドスケープアーキテクトとして考えていなかったのです。当時、造園は土木と建築の単なる下請けでしたが、それが役所の公園工事などがでてきました。しかし個人の庭はやはり儲けが少なく、バブルの頃は、個人の庭づくりはじいさんが趣味でやるもの、のような声も聞かれました。


←講演する政村さん


 わたしの造園はバブル気の造園業と違っていたので馬鹿にされましたが気になりませんでした。家の周りを作っていき環境を考えていこうという気持ちでした。造園業の多くはバブル期からの急転換についてい
けず時代のながれに乗り遅れたが、是非勉強して欲しいとわたしは思っています。小さなことに意味があります。

●いい庭のためになにを学ぶか

庭づくりは経験だけでできると考えられていましたがそうではありません。土壌、花の名前、住宅建築、壁、窓…。建物が和風ではなくなりましたから、造園のために建築を学びました。造園は建築とも土木とも違います。生命のある植物を扱うという点に一番の特徴があります。また色のバランスもあって、勉強する必要があります。

しかし、それで十分かというと、NOです。感性が必要です。土木と建築を勉強してもデザインは学べません。「自然を見つめる」「風景をよく観察する」そしてその結果として感動することが大切だと思います。忙しい合間に、映画を見る、音楽を聴くなどリフレッシュしていくのです。そしてその感性をもとに、クライアントに向かって「話し」「聞き」「意見を集約して」いくのがわたしのやり方です。

●自然で感性を養う

わたしの会社への入社希望者は女性が多いんですが、造園は体力もいるので甘くありません。ただ、女性の方が感性が豊かなことは確かで、情報量も男性とは差があります。ファッション雑誌なんかで色やコーディネートの眼力が培われますし、インテリアコーディネーターも女性が圧倒的に多い。



←ハーモニカなどの演奏でリラックス


庭の方も女性の方が平均的に上手です。花などは女性、樹木や石なんかは男性の方が向いているかもしれませんが、ガーデニングの歴史はまだ始まったばかりです。
 わたしは学生に旅をしろ、といいます。そこには造園の基礎があるからです。デザインの感性は自然が一番育ててくれます。「風」「色」を知って感じるのです。感動を繰り返すと感性は豊かになりますから、それを庭で表現するのです。このようなやり方で庭は良くなると思います。たとえば、支笏湖でもどこでも現地で覚えた風景や造作の感動を切り取ってきて、それをここに持ってくるとどうなるかを考える訳です。それがガーデニングの新しい形ではないかと考えています。
 旅ばかりでなく、音楽や映画でもいい。わたしも感性を磨くために音楽を聴いている、あるいは映画を見ていると、アソビだといわれたものです。30年前はガーデニングなんていう言葉がなかったわけですから。でも、イメージをもって庭を造ると決して最悪にはならない。かならずベターになります。
 時間をかけることです。イイモノは時間がかかる。時間をかければより良くなる。でも大体が途中であきらめてしまうんです。なぜ、短気ではできないか。たとえばそれは新しい1年草を植えるためには最低1年間、サイクルを観察する必要がありますし、また、新しい庭づくりの時、新しい土を自分の土にするためには時間がかかるわけです。

●庭と健康

繰り返しの中で庭の植物たちとコミュニケーションができるようになればホンモノです。
毎日ガーデニングやってるとそれはげっぷがでそうになることもあります。そんな中で淡々と毎日を過ごす、その繰り返しで植物は生き生きしてくる。それを支えるために庭づくりは健康であることが不可欠です。元気であること、平凡なことを楽しむことが大事だと言えるでしょう。(ここでハーモニカの演奏が入る)


←クラブのメンバーが政村さんを囲んで



●地域特有の庭づくりとは

よくここでいい庭の素材は何か、と聞かれますが、大きくは「北海道」ですよね。わたしは日本庭園を作りながら北海道の庭を考えてきましたが、内陸か、海辺か、その辺にヒントがあるのかなと思います。風に吹かれて残っている植物たちを見て考えていけば、たいていのことはできるのではないかと思います。できれば次の世代にも続いていくという風になればいいと感じています。


*このあと、政村さんが手がけた庭、北海道の感動的な自然風景、英国の庭のスライドをBGMを聞きながら鑑賞。ハーモニカとギターの演奏を挟んで、質疑応答があり、勉強会&トークは終了しました。



「ドイツに見る農村風景と森の散策 1」

去る10月の上中旬、駆け足で南ドイツを巡りました。仕事の旅行だったのですが
プランから関わったこと、添乗員兼務だったこと、ごく少人数でバスを借りたこと
などから、花や緑のポイントをいくつか見ることができました。これから、花から
質の高い緑へと庭づくりの主流が移っていきそうな気配があることから、気持ちの
いい緑の風景づくりという視点で、「我が村は美しく」「農村景観」「ルーラルパ
ス」「森林散策」について簡単に述べてみます。

「我が村は美しく」

1961年にドイツで始まった運動で、3000人以下の農村の農村風景づくり、古い民家の保存などを通じた地域活性化策です。正式な名称は「我が村はもっと美しくなるはず」という動きのあるもので、埋もれている魅力を出して磨いて過疎化に歯止めをかけようというようなねらいがあります。
 英国のBBB運動(Beautiful Britain in Bloom)やフランスを花で飾ろう・FF運動(Fleuriy la France)とどうも趣向が違うようだという予想は二つの受賞村をみて見事に的中しました。一つは1969年に受賞したザスバッハバルテン。バーデンバーデンのホテルで何気なく見ていた資料(これは前日バーデンブルテンブルグ州の観光局のヒアリングでもらったもの)で発見したもので、バーデンバーデンから車で小一時間の距離。この日はファンタスティック街道沿いにスイス国境近くまで南下すればいい行程だったので、急遽変更して道草したのでした。
 ザスバッハはおそらく1000人前後の小さな村ですが、黒い森をぬけると突然明るい丘の斜面農地と赤い屋根の村落が眼下に見え始めました。一瞬、おーっと声が出ます。沿道にシカ牧場、果物の無人販売所、水車小屋などがいずれもこぎれいにまとめられ、iセンター(欧米で完備されている地域の情報センター。観光案内もばっちり)が村の中心部にしっかりと構えており窓口には二人の女性がてきぱきと立ち働いています。
 木造の古い家並みが保存されて受賞の中心も建築物保存に対する評価が大きいとされていました。しかし、町並みは実に整然として気持ちよく、酪農や畑の中に浮き出てくるような美しさといえます。花はどういう役割かというと、骨格となる建造物を最後の最後につつましく飾る添景。存在感は小さくないけれど主役のようにしゃしゃり出ない、というところでしょうか。95%近くアイビーゼラニウムであり、ここの特徴は一つの飾りが畳み1枚近くあることと、ピンクと赤を適度に織り交ぜていること。


←ヘルゲンスバイラーのハンギング

 数日後、1996年に受賞したヘルゲンスバイラーにも寄ってみました。ここは塩街道のまちで関連する博物館がありました。事前に連絡したところでは村長が不在だったので、そのまま教会近くに車を止めてレストランに出入りしていた老人に突撃インタビューです。(つづく)









花だより

●この時期、秋晴れの日を選んで球根を植え込む。来春の花盛りを思い浮かべ、指先で土の感覚を惜しみながら球根を寝かしつける。「冬は長いよ、ゆーくりお休み…」 shindo

●紅葉も終盤を迎え、晩秋を迎えると同時に咲き誇った花館に感謝しつつお庭の冬支度に取りかかる頃ですね。今年は秋にもまたパンジーが店頭にならび、夏花と入れ替えて植え込んであるお庭があったり、おもわず「あら!」とふりかえる今日この頃です。ガーデニングブームで花市場も変化しつつあるんでしょうね。さて!来年のレイアウトはいかがいたしましょうか!? 細川

●緊張の解けた庭もいいもの。アスファルトの隙間にインパの実生の花が咲いたり、クリサンセマムが砂利の間で満開になったり、シャスターデージーが雑草化してなわばりを広げたり。朽ちていく庭に、今頃共感です。さて、今回は、活字の多い紙面になりました。写真中心のそれはプロにまかせ、こちらは地域発の小さなタネを育てます。年内、もう一号を予定していますが、さて。 草苅