手仕事の現地から

NO.18

2003/02/01〜

2月の中旬、いよいよ間伐の終わりが見え始めた。はじめの不安と終わりのさびしさ…。
チェンソーを持つと真剣勝負にならざるをえない週末の日々は、まさにリフレッシュと運動の
ひとときだった。振り返ると、カラマツの丸太がごろごろ。この後始末も一仕事だ。
今年、こんな森づくり作業と並んで、フットパスづくりをスタートさせる。
ササを刈るだけでみちができる、そんな地の利を活かして、いろいろな人が参画できるように、
今、その算段に入ったところ。


平成15年3月22日(土)はれ 9度c                      とうとう今シーズンの間伐を終えた。なにか、ずっしりと手応えがある。材をある程度片 づけることができれば、芽吹きのころはどんなに気持ちよい空間をみせてくれるか。でも 落ち着いた手入れ風景が見えるのは今年ではなくきっと来年以降ではないかと思う。    一応フィニッシュとはなったが、今日は出だしからアクシデントが続き、辛うじて終了 というのが実際のところだった。まず、9時の作業開始直後、チェンソーのチェーンが  切れてしまった。替えを用意していなかったので、厚真町の斉藤さん宅にいってチェンソ ー(ハスクバーナ)を借りた。戻って作業をを再開して15分ほどたった頃に数回ぐずっ てエンストしハスクも動かなくなった。スターターのワイヤも伸びたまま。やれやれ、今 日は無理かな、と斉藤さんに戻しにいくと、買ったばかりのシンダイワを貸してくれた。 折角だからまた戻ってスタート。もう、11時になっていた。それからが本格稼働。我な がらよく気落ちしないで続行したものだ。しかし、シンダイワは重かったので、疲れはい つもの5割り増し。そのせいか、遅い昼食の後30分ストーブの前で眠ってしまった(家 に戻ってからもいつのまにかソファーで寝てしまった)。               切れたチェーン。上は活躍した借り物のシンダイワ。  作業の後半は、懸かり木も構わず、伐るだけ伐ることにした。申請期間が終わってから ゆっくり玉切りをすればいいし、風で倒れてくれるかも知れないから。これでテープの着 いた間伐予定木のほとんどがなくなった。サラリーマンが冬の毎週末の数時間だけ作業を してもひとりでほぼ 1haの間伐ができる。これはここ何年か繰り返し経験してきた事実 である。運搬もしてしまうと、この半分ほどの実績に落ちる。              マガンたちが上空を飛び交い、東側の畑の方からは、ガンを追う空砲の音が聞こえる。 上昇気流が起きていてトビに混じりオジロワシが飛んでいる。気温が朝から9度ほどある ので雪解けがどんどん進む。この冬の間凍っていた林道のへこみの氷が割れ始めた。朝は 快調に氷の上を走ったのに、アクシデントで往復する間に、あちこちが割れ始めて車がは まりだした。夕方帰る頃は雪解け水が流れるだろう。そして、林道はこれからぬかるみに なる。土壌が凍結していてそれが不透水層になり逃げ場のない水が地表にたまるからだ。 これが苫小牧の早春である。                            作業終えてまずベランダでエビスビール。無事完了を祝う。  本当にいい時期に終了した。まるでほうほうの体で逃げて帰るような感じだ。ラッキー というしかない。これから2週間は林道に入らない方がいい。その間に雪は完全に消えて ナニワズの黄色い蕾が顔を出す。                         
平成15年3月15日 晴れ時々くもり 9度C                しみじみとあったかい。林道の雪も林のそれもざくざくに腐れてきて、春にむけた雪解け が本格化し出した。これまで気温が低かったので雪解けはずっと停滞したままだった。  キハダを2本伐採した。材は柔らかく、鮮明な黄色が  印象的。枝の分かれ方はどこかシカの角を連想させる。  先週から、林道から見える部分の修景にも気を配ることにした。といっても、「おお、 人の手入れのにおいがする」と道ばたからわかるように、ちょっとメリハリをつける気構 えだけの話で、枝打ちの跡を見せたり、ぼさを低く押さえたりという簡単な手入れだ。  来週でフィニッシュになるだろう。ビールでも飲んで一日ゆっくりしようか、と思案中。 しかし、仕事も雑用も詰まってきた。                        平成15年3月日(土曜日)くもり、強風                    イアマフ越しにゴーという風の音が聞こえるが、林の中はさほど風はなかった。しかし、 シャツ一枚で動き始めると、汗はかなり押さえられた。動きを止めるとやはり寒い。林道 を挟んだ向かい側に形のいいコナラとであったのでなでたくなり、写真を撮る。仰ぎ見る と威風堂々としており、風格と個性を感じる。                    ドングリから生まれたミズナラは奔放に枝を出す。 萌芽から出た再生の幹はまっすぐになる。      今日の作業の最後にと残しておいた、ツルのからんだカラマツを伐採したのだが、さす がに手こずった。直径30cmのそれは、ツルが隣のコナラなどにもからんでいたのだ。斜 めになったままで2本のコナラの枝先が引っ張られて弓なりになった。どうしても離れな オブジェ「現代の形相」。ツルにとられた木々の悲鳴が幹に 刻印されていた。難問がからみあった現代の混沌に似る。  い。しばらく思案したが、このままにして帰るのはかえって痛ましく感じて伐採すること にした。この夏に新しい枝が萌芽して再生してくれるはずだ。おかげで、上にぽっかりと すき間ができた。                                 平成15年3月1日(土曜日)晴れ 5度c                     この春初めての雁が飛んできた。マガンかヒシクイかはわからないが、イアマフ(消音用 の耳のカバー)越しにも聞こえるほどの大きな鳴き声。春なのですねえ。        雪が腐れ始めた。ウサギの足跡がのどか。 残す太めのカラマツを見上げる。  子供の卒業式に家内が出かけたので車が使えず、家で仕事をこなし昼から作業に出てき た。何か、仕事をしてから出てきた、というあたりがミソ。何につけケリをつけておくと 打ち込めるカギが手に入る。しかし作業は最初から難航。ツルにからんだ数本に手を焼い てしまった。                                    坐骨神経痛の疼痛が右腰にあり、足に不快感としびれがでる。逆療法と称して続けてい るが、銭湯などであっためるのが一番。今日もいかねば。               16,7年まで成長が早い。今は38年。 20年間は細々だった訳だ。 切り取ったくさびのにおいを嗅ぐ。  伐採の時くさび状に切り取る切片を嗅いでみる。かすかに針葉樹らしい芳香がある。こ れは癖になりそう。木口にも鼻をよせて嗅いでみる。いい香りだ。ついでに年輪を見る。 17年まで順調に伸びてそのあと年輪幅が著しく小さくなっている。ほんとうはこの辺で 間伐が必要だったのだ。                              平成15年2月22日(土曜日)晴れ                        もう残り少ないと思うと、なにかいとおしい気分がひとしお。9時過ぎ、カラマツの林に 入ると、日射しが枝先をもれて差し込み、神々しい。手にしていたチェンソーとガソリン を足元において、手を合わせ深呼吸する。カラマツの幹にふれ、幹の上部、枝先に目をや る。                                       倒れ始める頃を見計らい、左手に体重をのせ加速させる。 右手はチェンソーを操作したまま。(satomiさん、撮影) 倒れたカラマツをいずれ持ちやすい目方を想定して適当に玉切りする。 こうして見ると木立は樹皮をまとった、物言わぬ個性だ。(同上)  懸かり木を処理しているとき、危険なリアクションがあった。懸かり木になった幹の  下部を切り落とす際に、根本の部分が跳ね返って来たのだ。直径20cmあまりの幹が、 もし、わたしの頭や腕にうしろから直撃したら…。驚き、立ち止まって反省した。こうや って、ミスのないように経験を積み重ねる。それでも刻々と状況が変化し、危険は減らな い。同じ状況の繰り返しというのがない。緊張するところだ。              11時過ぎ、入谷さんが奥さんとともにやってきて、奥さんのsatomiさんはポータブ ルの掃除機で小屋の掃除をしてくれた。またバケツと水、雑巾持参で窓を拭いてくれた。 多謝。1時過ぎから遅い昼食。薪にキツツキがやってきて、satomi さんが撮影にチャレ ンジするが、やはり逃げられた。                           外に変わった足跡が見つかる。キツネでもウサギでもイヌでもない。両足の間隔が40 cmほどあり、足跡の大きさは15cmほどの楕円。アライグマか、との説でる。    平成15年2月15日(土)晴れ                          7時半に家を出て現場に向かう。林は日差しが穏やかななごみが感じられ、雪解けが近い と直感する。しかし、林を洗う風が冷たい。風邪気味のせいもあるが、作業をしていてほ とんど汗をかかなかった。                             ドドーンと倒れたカラマツと奥の林  仕事が遅々として進まなかったのか、といえば逆。先週の懸かり木2本を難なく倒した ほか、思い通りの方向に倒すことができてとてもはかどったのだけど、それでもウォーム アップされなかった。だから、動く。結局早めのアガリまで、汗をかかないで終わった。 カラマツの枝でできた鳥の巣。巣穴の部分はは意外と小さい  ますます残りのゾーンは狭まった。あとは貼るの運搬作業が課題だが、人工的なシュラ というのはどうだろう。捨てるうら木を横に敷いてその上で丸太を引っ張るのだ。予行演 習をしてみよう。                                 穴が空いて補修している防寒靴 2月8日(土)はれ                                黙々と、わたし。毛糸の下着にワイシャツ1枚でも暑すぎる。春なんだあ!(photo;入谷さん提供) 東京へ向かう娘を空港に送りログに着いたらもう11時を過ぎていた。入谷さんがすでに 到着しストーブに火を入れているところだった。チェンソーが切りくずだらけなので分解 掃除してゴミを落とし目立てをすませてから作業開始。入谷さんも果敢に太めのものに挑 んでは懸かり木になる。もちろん、わたしも懸かり木に悩みつつ、精力的に片づける。日 差しがあり気温がプラスなので、雪が腐っており、ナイロンの防寒靴は水が浸みてきてた まらずアングラーの長靴に履き替える。残りは多くない。先週切り倒したコナラの枝先を 鋭利な刃物できったような食痕がある。ウサギである。マコロンのような糞も雪の上にポ ロポロと落ちている。1時半までメシなしで作業。                  倒したカラマツの枝を払う入谷さん。 もう春の日差し。久々にログまで車を入れた。 2月1日(土)雪時々くもり                            現場の風景。いんいん滅滅たる光景にみえるが、ここは 気持ちひとつ。                   30,31日と札幌の大雪をよそに苫小牧は雪がなくて晴れていたのでシメシメとおもっ ていたところ、現場は結構な雪で、林道は新雪がもっこり。轍なし。カラマツの幹や枝に ほんわりと雪がいっぱい着いている。風が吹いたり、チェンソーで振動を与えるつど、降 りしきる雪のほかに、枝から団子のような雪が落ちてきて、濡れてしまった。11時頃、 KUKE さんがハスクのマイチェンソーをもって応援に来てくれた。震動があり音も大き いけれど軽いのは魅力。危険のないように、2,3のコツを伝授したのち、少し離れて作 業開始。やはり懸かり木に難儀しながら、1時頃まで。                NUKEさんのハスクバーナ。軽くていい。 懸かり木を倒しにかかるNUKEさん。

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雑木林だより17