手仕事の現地から

NO.19

2003/04/05〜

一挙に春の風情がやってきた。急いで
気持ちを春モードにあわせ、新しい人生の一ページになる
今年の見取り図を書く。まず、間伐した材を片づけねば。
そして、林とこころの間柄を「魂が喜ぶみちを創る」ことで
身近なものにする、ちいさな実験が始まる。
誰にも知られることなく、静かに、しかし、はばけるほどの
充足感が伴うことは想像に難くない。
願わくば、集団としてではなく、個々人の自我が木々の個性と出会う、
そんな時間になれば申し分ない。



「新緑がまぶしい日、沼を巡るフットパス作り」     5月31日(土)曇りのち雨 修理したブッシュカッターは調子がいい。この程度に 道らしくなれば歩けるだろう。ここまでが大変だ。 ブッシュカッターをもって平木沼のフットパスに向かう。二枚刃のブッシュカッターは危 険もあるのでボルトのゆるみなどないか点検して、気をつけながら田園地帯めがけて早速 刈り進む。おりしもコナラの新緑のもっとも美しい日で、林道の雑草もみずみずしい。チ ョウセンゴミシ、ミヤコザサ、フキ、などが多い。スミレとエゾタンポポは刈り残した。 ときおり、プンといいにおいがすることがある。おっと、テンナンショウだ、サクラちゃ ん、ごめんなさい、アラ、コブシさん、などと集中した狭い視野に次々と現れる植物たち に気づきながら左右に回転刃を振る。ものすごく集中している。あらかじめ数回歩いてい るので、コンクリートや切り株はないのは確認済みだが、念には念を入れる。ほぼ1時間 で田園地帯に出た。                                新緑。コナラの鶯色が混じるので、浅黄色になる。一年に一度の至福の色だといえる。1週間でこんなに違うのだ。 ログも心なしか、映える。ログにとってはこれから暗い夏?が来る。  沼の展望地に戻ると湖面を渡ってくる南よりの風が冷たい。この風が、林を疲れさせる のだ。海から原野を渡ってくる風は、植生を原野に戻したがっている、意地悪な風である。 今日は思いがけず、沼を巡って田んぼに出る道、ほぼ600mほどを刈り込むことができた のでちょっと満足した。それにしても今日のコナラの新緑は美しい。コナラの開葉は例年 より1週間遅い。曇りの日はまた一段と緑がやわらかく、たっぷり目の保養をする。イカ ル、アオジ、ツツドリなど鳥の声も高らかだ。                   
「丸太を運ぶ」                   5月24日(土) 霧    まず、広葉樹を運んで下ろす。 苫東のOB有志が間伐材を運んでくれることになった。会社からはトラックを提供しても らえるのは、大助かりだ。佐藤さんを朝拾い買い物をしてログには9時半過ぎに到着。札 幌から原口さんが見えてすぐ、トラックで中條さんと嶋岡さんが到着。久々の対面を祝っ て‥‥し、10時過ぎには早速、まず広葉樹の薪はこびを開始。薪としてはナラやイタヤな ど広葉樹が火持ちがいいからカラマツより上等品なのだ。サクラも結構多い。丸太は一人 でもてない重さもときにある。2台目からカラマツを手がける。林道のそば5,6m付近 の丸太を拾い集めるだけでちょうど4tトラック2台、運搬距離が100mあまりだから1  時間あまりで、形がついた。札幌の大野さんがこのころ参上。OBはここら辺が筋肉痛の 起きない限界だと判断し(この辺がいい)。続いて山菜取りに出かける。シドケ、アズキナ をとってからタラノメへ。ウドも少々。各々、好みのものを食べる分だけいただく。   さて、そろそろログへ帰ろう。  戻って12時半からBQへ。なれた手つきで火を起こし、数年前に作った自家製の炭を  使う。久々の厚真ジンギスカンのほか、カルビー、ホッキ、ホッケ、ホタテ、イカ、たけ のこ、シイタケなど。大野さんは小樽のガサエビ(シャコ)を持参してくれた。      コナラの新緑はまだでアオジ、キビタキが鳴いていた。サラリーマンのおじさんたち、 少しこころの疲れがとれ元気が注入されたのだろうか?                まだ早春の風景だから、えらく明るい。 「フットパスの段取り」         5月17日(土) 14:20 晴れ 15℃  滝沢先生とフットパス作業の段取りをする。コナラの小道の延長を患者さんらの森林作業 として一部取り込んでみるもの。間伐によって一面に繁茂した背丈の低いササを鎌で刈り 込むだけでかそけき小道が出来上がるのだ。すでに作った小道に先生を案内してから、こ れから伸ばすルートにテープをつけて現場の引継ぎ。北へ向かうルートもついでに案内し た。先生言うには、やさしい雑木林だから安らぎのイメージがあるが、初めての人にはど こを歩いているか不安がありそう、という。                     田園のフットパス。作られたばかりの農道にぽっかり出る。 いい気持ち。  なるほど。それは解決が簡単。大体林道から30m程度しか離れずに並行しており、林 道そのものが左右に蛇行しながらもほぼ南北にのびているから、あらかじめそのイメージ を入れてしまえばいいから。                             それから平木沼の田園フットパスへ。途中、ヤマシャクヤクの群落に出会う。先生もや はり疲れた林のイメージを持ったようだったが、田園にぱっと出たら「これもいいじゃな い!?」てな感じになったみたい。それほど、今日みた早春の厚真の田園はよかった。   ログに戻ってからはしばし呼吸や自然治癒やプラシーボの話、開脚前屈の恐るべき効果 穂高養生園のことなどを2時まで。                        


サクラの老木が満開の花を咲かせた。
朝よりもぐんと花開いた。

「小道のネーミングとまき割り」      5月9日(土) 12:20 曇り 14度c   落ち葉をめくってみるとミミズ2匹。いまや、ミミズは畑には おらず、林の中だけというハナシ、意外と本当かも。    ■ 昨年作った小屋を基点とした新散策コースはどのくらいの時間がかかるのか。そして、 実際何に効くのか?この大事なことのまとめがまだなのに気がついた。まず時間。実際 に歩いてみると南に進んで小屋に戻って10分、北に向かって戻ると10分で合計20分。 途中、大木と出会って対峙したり、草花と対面して立ち止まったりすると、30分近くに もなるということになる。                              さて、ネーミング。「ちょっと歩くと元気なったり気が軽くなったりするフットパス」と いうことを手軽に表現できる名前であれば申し分ない。とはいうものの、体験者はまだわ たししかいないから、客観的にどういう効果があるのかはなんともいえない段階。だから、 ありのままの現状を表現して「ササのふみわけ道(フットパス)」「コナラのフットパス  」「雑木林の小道」などというパターンがとりあえず考えられた。近いうち、知人,OBな どを案内することができた折、反応を聞いてみよう。感性の高い反応を期待したいところ ‥。                                       右が比較的乾いた薪。左はしっとりとぬれている。 ■ 森林散策をすすめるクナイプ療法の運動療法の中にかつては薪割が入っていた。小屋の 目の前には、まだ小屋の一年分以上が、割られるのを待っている。そのうちと思って放 置してきたが肉体労働をともなう作業が少なくなってくると、いよいよこれの征伐か、 とあいなる。割ってみると、割らずにおいた1年の間に、乾燥はほとんど進まず、むし ろたっぷり水分をためてしまったことがよくわかる。樹皮はことごとくはがれてしまう し、周辺は水気がたっぷり。割って乾燥、これは鉄則だとあらためて知る。割ったまき をリヤカーで裏に積む。療法として爽快感はあるが、思い切り斧を振り下ろして、割れ ないとき、これは肉体的にも精神的にもストレスになる。手強い反応で果たしてこいつ は割れるのかというがっかり感と不安感、それと頭にがんとくる物理的刺激。これは決 して医学的にはよくないのではないか、と思う。心身に負荷がかかる。こんなことをい うと誰もやってくれなくなるから、これは50歳以上にとっての話、ということにしよう。 割った薪をリヤカーでログの裏に運ぶ。絵になるのでまた撮ってしまった。 ■間伐材はすべてを小屋で使いきることは困難だ、という方向に固まってきた。その量、 その重さ。とりあえず薪として格上の広葉樹だけでも使いきろう。そう思って、北側か らナラやサクラなどの広葉樹を林道脇に運び出す。肩に乗せて一本ずつ。これはのろい 作業で、現代的効率の話の埒外。だが、ずっと続けばいつかは終わる。全体の20分の1ぐ らいはしただろうか?気の遠くなる作業だが、切ったカラマツはさらにその20倍ほどある。 あああ!                              『片付ける」              5月5日(月) 9:30 うす曇 10度c   これが寄贈のリヤカー。里山ムード。 7時半から作業を始めて一段落した。間伐したままの幹を何本か見つけて気になったので 運搬作業の前までに丸太にしておこうとやってきたところ。久々の力仕事だ。普通、間伐 そのものよりも倒した木を枝を払って丸太に切るほうがつらいという。だから、わたしは 一本一本そのつど丸太にしてきたつもりだが、それでもこんなに霧の腰がでる。運ぶ丸太 は数本積むようにして、枯れたハネ材は枝だけ払って放置することにしてきた。ここでそ のまま腐らすのだ。                                高い切り株をいすにした。  カラマツの緑が芽吹いてきた。来週は、林全体が緑に変わるだろう。24日には、OB数 人といよいよ運搬を始める。間伐後のカラマツ林を歩きやすくするためにも、できるだけ 運んで利用したところだ。                             『薪をどう利用するのか」       5月4日(日)15:30 気温20度c       間伐したカラマツの運搬をどう進めたらいいか。とりあえず24日はOBの人たちが数人 きてくれるかもしれないので、その段取りに林の材をもう一度見て歩いた。間伐材が多す ぎる!。これは使い切れないし、運搬の人手が足りなさ過ぎる。直径の太いものもたくさ ん混じっているから、往々にして非常に重たくてもてないのである。これはあきらめざる を得ないかもしれない。一番奥の材などはある程度林の中に残地させることにしてしまお う。もったいないことではあるが、奇跡でも起きないと小屋まで運ぶことはできない。   午前中にリヤカーが届けられていた。初めて対面したリヤカーは結構コンパクトなので 材は寸断しないと乗せられない。だがきっと手伝いに来る人の子供たちには手ごろな遊び 道具になる。また、北大の名誉教授の梅田先生に、中島敏夫先生が使ったという「のこぎ りとなた」を譲り受けたので、もってきた。「のこぎりとなた」に懐かしい林のにおいを嗅 がせてやろうと持参したのだ。いずれもとても年期が入っており重厚。ちょっと宝物にな りそうな本格派である。                              のこぎりとなた。居間は自宅の机の前にある。  小屋の前で春の山菜・ユキザサを少々いただく。今晩のおひたしとなる。季節の旬のも のを年に1回、感謝していただく。大地からの気が、体に満ちることを念じて。      アズキナ。ほのかに小豆のにおいがする。 『生活のサイクルとストレス」          4月26日(土)雨     窓の外は雨。二股の木はホオノキ。 3週続けて雨に見舞われた。私の最近の体力からすると、力仕事は土曜日にして日曜日は 安息日か、軽い釣りや庭仕事に当てる、などというのがいい。これが土曜日を安息にして しまうと日曜があたふたとして月曜に疲れが残る。そのパターンはどうも不完全燃焼のよ うなくすぶりを感じる。今日は、近々いただくことになったリヤカーの御礼にお菓子をも って厚真に行ってきたところ。雨はずっと小降りだが、散歩するためのかさがない。仕方 なく、じっと薪ストーブの前に座ってボーっとする。事実上、連休の初日だが、午後から 新しいパソコンに乗り換えるため知人にアドバイスを願うところ。パソコンの乗り換え、 これがストレスフルだ。どうなるか。                 「フットパスを歩いてみる」       4月20日(日)曇り 外は11度c  左:沼の展望はこんな風  右:大鎌をもったわたし 昨日の土曜日はしっかりと雨が降って、「林とこころ」の道づくりの段取りが中止になっ てしまった。で、イレギュラーながら、わたしだけ今日、チェンソー、大鎌、鋸をもって 出かけてきた。平木沼の縁から田園に出る道を先週は下見し、今日からは片づけの作業に 入る。まず、かそけき道のササ刈りをはじめたのだが、のれんに腕押し、なかなか効果が 見えてこない。徒労感だけがつのり、疲れてくる。ササ刈りに全力を使うのは止めて、倒 木、懸かり木、道に枝を出す灌木を整理することにした。小一時間作業しながら進んで畑 にたどり着いたとき、ちょうど12時になった。                   左:徒労感が残る懸案のササ道  右:苫小牧の春一番「ナニワズ」が満開   帰り道、フットパスとしてのこの道の特徴と効果を考えてみる。田園にぽっと出ていく 開放感はとてもいいが、途中の林は随分と荒れているのである。特に沼の周辺は若い枯れ る林だった。林がいつも疲れて見えるのだ。そこをフットパスと見なして実験台になって みると、疲れた林がこちら側にいいエネルギーを送って来るという感じではどうもないよ うな気がする。ただ、これから緑に覆われるとどうか。沼と田園という変化はどういう印 象に与えることができるか。そう考えてみると、あまり悲観しなくてもいいのか。    雑木林の早春の林道  小屋に戻って昨年つくった道を歩いてみると、さすがに大木も多いこの辺は、里山のよ うなほんわかした雰囲気がある。直径30cmを越えるコナラ、腕を回しても届かないカラ マツなどに、折々に抱きついてみると、この重さと樹高をもつ生き物につくっていく自然 の法則の存在に改めて気付く。その法則がわたしにも通じている。           『廃道を見つける」      4月13日(日)12時半 小雨 外は10度c   12日の夜明け前、少しばかり雨が降ったので、この日の作業は取りやめだとあきらめ8 時頃ユックリとNUKEさんにメールしたところ、彼はそのころ現地に出かけていた…。と いうわけで待ち合わせが失敗し、わたしは札幌であった午後の会合に出てしまった。  小雨の平木沼。静かだ。  NUKEさんには掲示板で訳を書いて謝り、そして今日、平木沼フットパスの可能性を探 った。いやいや、いい廃道がみつかった。沼のほとりをうまく道ツケできれば田園地帯に 上手に出かけられログハウスまで一周できる。変化のある1時間コースで、これを歩けば 日頃のストレスも大分癒されそうな気がする。また、このほかにも数ルートをつくりうる 随分里山らしくなってきたわが雑木林の里山だが、このままいくと苫東・里山フットパス というのが100kmほどできるかも知れない。道と沿道の林をボランティアが維持管理 することにしていくと、面白い癒しの里山が世にデビューするのではないか。忙しくなっ てきた。                                    


ササがはびこる廃道。倒木もツルも多い。

15分ほど歩くとこんな厚真の田園に出る。気持ちがいい。


帰途、サワシバの美しい枯れ葉に出会う。思わず。

「tさんの山にて」 平成15年4月5日(土)高曇り 気温は7度ほど     苫東・静川の現場は、雪解け水の大発生で林道がうんでしまうことから先週に引き続いて 今週も休みにして、植苗のTさんの山へ間伐の手伝いに出かける。その前に、燃料とチェ ンソーオイルなどはログにあるのでちょっとだけ寄ってストーブをたいて雪解けの雑木林 の空気を吸う。やはり林道の水たまりは深い。しかし、何か、冬が終わってシーズンが変 わった感じが濃厚。来週から、みちづくりの作業に入ろう。              倒れていたサクラの木を使って展望地に座れる場所を 作り始めた。                    美々川沿い左岸にあるTさんの小屋は海岸段丘の下の縁にあって、2年前にも地域通貨 ガルを使って手伝ったところ。南西に開けていて気持ちがいい。きっと風水ではいい線行 くのではないかと素人判断する。ただ、千歳空港が近いの飛び立つ飛行機の轟音がひっき りなしに聞こえる。                                 さて、その林。原野商法で売買された土地だけに、もっている地番は等高線に関係なく 急斜面を斜めに横切って短冊形のようだ。上部の平坦地は、不在地主が持つカラマツ、ス トローブマツの50年生程度と広葉樹のミックス。落葉期の今は眺望がいい。美々川と流 域の美々湿原が眼下にあって、白鳥が2羽、見えた。                  裏を見て回ると、小屋の後ろにかすかに残る道の形跡を発見、上までたどるとそこが結 構楽しめる広場。前回はそこへ南側から手入れしたのだが、こわれた建物があって廃墟っ ぽい。やはりこちらがいい。というわけで、Tさんとお仲間の方はササを刈ってレーキで 落ち葉をよけて道づくり。わたしは、チェンソーで、藪を片づけ、カラマツなどの下枝を 打って、枯れ木と傾斜木を片づけた。最後に、サクラの木を組んで休憩地をつくった。  小屋からあがる小道。ミズキ、フッキソウ、ナニワズが多い。 小樽・忍路のパンなどをいただく。ポットラックパーティ。  開始時は3人だけだったが、昼食時には7人に増えてにぎやかなお昼になった。土地が 誰のものか、という問題を別にして、こんな風に共有できれば事実上英国のコモンと似た ものになる。保養地のにおいも醸し出すことができる。そんな資質をもった一角だ。  

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雑木林だより18