林の手入れをしながら、林に遊ぶ

NO.21

2003/08/30〜10/25



雑木林の真ん中に、ログハウスがあることの存在意義は
実はものすごく大きい。かつてロンドン在住の佐藤万理さんは
英国古代のニメトンだ、といってくれたほどだ。

そこの周辺に繁茂する草を、ただ黙々と刈りまくり、薪を割り、
冬に間伐した丸太を、腐らせるものかと、林道脇に藪だししてきたのが
ここ3,4ヶ月の仕事だった。

物質を循環させるというのは、一人だとこの程度が出来、
これ以上はどうしたらいいか。単純な経路が見えてきた。



ひと足違いで 平成15年10月25日 21時45分 ログハウスでの夜の会合をふたりと約束したのに、わたしの会合が長引いて夜の10時前に 小屋着。しかしログハウスは真っ暗で不審に思って携帯から電話すると、何か事情があっ てこれなくなったのだと判断して今しがた帰宅したとのこと。最悪のケースだ!待ち人帰 還で一人、腹減ったし、一人泊まれる状況にあらず、どうしよう‥。で、結局自宅へ戻っ た。小屋にいた二人は携帯がなく、先方の本宅に数回電話した遅刻の内容はここへはまっ たく届かなかったわけで、情報の隔絶は怖いと痛感。


荒天をついて                         平成15年10月18日 雨 ログの周りは今こんな風。実際はもっと紅葉は進ん でいる。家内もコナラに抱きついてみた(右) 折角の紅葉のピークを見逃してはくやしい、と雨がやんだ昼過ぎ、まだ風の強い中、家内 と出かける。家内の仕事の時刻まで帰ってくる予定だからちょっとあわただしい。紅葉は しかし、フットパスから見るのと林道から見るのとはだいぶ趣が違う。どちらもいいのだ けど、写真など見る風景としては林道や中景がちょっと上かも。でももっと近間で感じる 紅葉というのは、断然林の中だ。フットパスはそのためにあると言える。一回りすると30 分。フットパスはもうずいぶんできてきたような気がしてきた。            深い呼吸を試みる。右=カラマツ間伐材を誰かがブルで片付け始めた。 若い友人たちの来訪  平成15年10月11から12日 晴れ こんな紅葉がスポット的にある、今はそんな状態 穏やかな土曜日。先週はウルシだけの紅葉だったが、今週はヤマモミジが真っ赤だ。札幌 から昔の山仲間が泊りがけでやってくるので午後から楽しみにして出かける。小屋の暮ら しは学生時代、ヒュッテン・レーベンなんてドイツ語で表現したりして時にすましていた もの。彼ら2人が来る前に、カラマツの路を寸断している倒木や丸太や枝を除いて、それ でもう3時半になった。焚き火の晩餐会の準備を始めると、白い車がやってきて男女が降 りた。育林コンペ以来、この林の常連だった好田さんがご主人を案内してきたのだ。春だ ったかに結婚して宮崎におり、クラフトの修行をしていると聞いていた。里帰りの途中、 寄ってくれたとのこと。懐かしさで立ち話をする。記念撮影を2,3枚とった後、二人は北 大の学生たちが手入れした雑木林のエリアに向かった。手がけたフィールドがやはり懐か しいのだと思う。残念ながらそこは手入れのにおいがしない場に変わったから、どんな感 想をもって帰るだろうか。                             木工(クラフト)を志し修行するふたり  4時半ころに青池、小林の両氏がレガシーでやってきた。暗くなる前に、まずフットパス を案内してこの林の特徴などを紹介した。そして、晩餐会の準備に入る。たっぷりの焚き 火がおき火になったころ、まず秋刀魚を焼いた。そしてカルビー、ピーマン、手羽先、ハ ニーバンタム、そしてメインはダッチオーブンで煮詰めるポトフ。セロリがたっぷり入っ た鶏肉のなべだ。青池シェフは若いときから腕のいい料理人(ただし趣味)としてならし ており、私はその自称・門下生である。小林ドクターは高校も同じの若い山仲間だから、 焚き火から調理まで、何の打ち合わせがなくてもどんどんことが進んでいく。お互い、自 分が今何をやればいいかが、一連の山の修行でわかっている。これが気持ちいい。オール ドボーイのアウトドア。                                 まきが燃える。静かな闇、そこで静かに語る 朝、笹道を歩く。そしてログにたどり着く 朝、もう一度、火を起こす。散策のあと、昨夜のポトフに舌鼓を打ち平らげる  風のない、蚊のいない穏やかな夜。秋刀魚で大吟醸、カルビーで極上の焼酎と進みビー ルは一番後。来し方と各々の今をかわるがわる語りながら、しずかに夜はふけた。朝7時 小林ドクターと新しいカラマツの笹道を歩く。                    新しい道を手がける              平成15年10月4日(土)くもり 15℃ 大木の紹介‥                 緑に飢えてくると訪れる北大のイタヤカエデ。  直径2mちかい。かつてワンダーフォーゲル部の ルームがここにあった。すごい大木だ。200年 ぐらい生きているのではないだろうか。     昨シーズン手がけたカラマツ林の奥を今シーズンも手がけることにした。カラマツ林がや はりとても気持ちがいいからである。そう思っているうちに、カラマツ林の中をぬけるフ ットパスがあればいいと考えるようになった。所有者に了解を取ったので早速今日から道 作りに入る。                                   刈った直後は道が判別できない(左)。直径60cmのカラマツの大木もある。 込んでいる雑木林の方から刈り始めたのだけど、刈り進むべき草が乏しいところもある。 これでは道ができないから、どうしても蛍光テープで案内する必要が出てくる。でもまず まずだ。快調に刈り進んでカラマツ林にたどり着いたときは1時半だった。2時間以上の重 労働だった。これもとてもいい道になるかもしれない。                普通はだれも通らないこんな林道にぽっかり出る。 そしてまた、雑木林に戻る。案内サインをつけると 見違えるだろうな。               平木沼はケカレチか            平成15年9月27日(土)晴れ時々曇り 20℃ 26日の未明、0450に震度5の地震に襲われた。久々に恐怖を感じる地震である。大きなゆ れだったから、ログの薪は倒れているだろう、今日はその片づけかな、と半分あきらめて いたが、ラッキー!!セーフだった。                        薪はかろうじて大丈夫。ホッ!笹道はいつもどおり。  平木沼の道を刈り払うべくブッシュカッター持参して湖岸に出向く。ハンノキも混じる 湖岸の林は、海風がやってくる方向に開けて、樹木がしばしば枯れており、「ここが癒し になるだろうか」と危ぶんだところだ。ケカレチであろうか。その延長線上に育林コンペ で北大の学生が担当したエリアがあるが、そこも育ちは悪く学生たちはむしろその貧弱さ を工夫した。さて、そのケカレチ的林であるが、フットパスを200mいくと尾根筋にでる。 ここはケカレチから飛び出るのだが、手入れのされていない荒れ方で、イヤシロチには感 じない。林は、ある程度人の手をかけないと、つまり里山的な雰囲気が出ないと本来の林 のエネルギーは感じにくいようだ。      ウルシが紅葉を始めた。  で、ブッシュカッターだけど、エンジンがかからない。点火プラグをはずしてみると、 べっとり濡れていた。そしてスペアを切らしている。仕方がないので、大鎌をもって田園 まで道にかぶった草を刈り払いつつ、かつ落ち枝を片付けながら往復。  ログのそばのカラマツ林では、これまで積んでおいた丸太を斉藤さんが持って行ってく れ片付いている。まだまだ、林内に残っているので30分だけ20本ほどを運ぶ。こうしてみ ると、カラマツの林はかっこいい。ここに道をのばしてみよう。探索にいってみると、し めしめ、気持ちのいいコースができそうだ。


ボリボリをいただく             平成15年9月20日 晴れ後曇り 17℃ 左:林はとっても元気に見える。右:そこへ斉藤先輩が‥ 気持ちよく晴れた朝だった。少し遅くまで寝ていられる休日の朝は、それだけでも至福、 それに気持ちのいい目覚め。さて、待ちに待った年に1,2回のキノコとりだ。小屋につ いてすぐさま、かごを下げて笹道をたどるとクラクションが鳴って、わたしを呼ぶ声がす る。厚真の斉藤さん(もう70歳を超えた模様)である。笹道を急いで戻るも、結構これ が長い。道があることを知らない斉藤さんは、ササを漕いでやってきてご対面。ボリボリ をとりに来たらしい。地元の人でもまだいい収穫はないらしいのだ。          左:チョウセンゴミシとボリボリの図。⇒:この日1時間のの収穫、全体。  斉藤さんの軽トラックで北へ行ってみる。最初に止めたのり面の頭のところで、大きく なったボリボリをいくつか発見。次に13年に間伐した跡地に入ったが、ここはほとんど 見えず。斉藤さんとはここで別れて、単独行となる。ない。札幌へ行く時刻が近づいたの で、ひとり小屋へ戻って軽く昼食をとろうとリンドウを歩く。一人の林道も楽しい。思え ばいい道がある。                                 途中、地元の人に会う。「どうですか、今年。とれましたあ??」「いやあ、だめだね。 人の足跡ばっかりだ」。しかし沢筋ののり面のうえでまたもやボリボリを見つけた。そば に行くと、どうやら、畑上のボリボリだ。大収穫といっていい。年に1,2度、こうやっ て地面から生まれたものを食するのは大切にしたい。相変わらず、蚊はいる。     


蚊に襲われつつ雨の笹道を歩く              平成15年9月13日(土)雨 札幌と釧路から雑木林にお客さんが見えた。雨がひどくなりそうだったので、ストーブの 前に座る前に早々に笹道へ案内。今日の訪問は、公園の人工林の手入れのヒントに雑木林 を見てもらおうというもの。切っても切っても再生してくる雑木林の力が、人工林の中に も活用できればいいのだけど、あのエネルギーと多様性は、早い話が人工的な林にはとて も追いつけないすばらしい仕組みなのである(ちょっとはしょりすぎだけどね)。 雨の林はこんなに暗い。そしてお別れする際の小屋の前。明るさはこんなに違う。  このテーマは一晩話し合っても尽きないほど、面白い事例がありそう。そういう意味で は、釧路の工藤さんのこれからのお仕事にはちょっと注目していきたいと思うものであり ます。                                      蚊がでてきた                     平成15年9月6日(土)15℃ 雨上がりの雑木林では、まさに緑に染まりそうだあああ!! 雨上がりで、珍しく蚊が多い。出てくるとわかるが、蚊がいる林は、実にわずらわしいも のだ。と、今日もあごを2箇所、ご馳走してやった。                   先週、林道から飛び立ちすぐそばの枝にとまったハト大の鳥が、赤い足をしていた。あ れはなんだろうと気になって図鑑を調べてみた。どうも、チゴハヤブサしか思い当たらな い。いつからか聞くようになった、あの、キーッ、キーッと鳴いていた声もチゴハヤブサ に近いようだ。                                   昼前から札幌で用事があるので、今日は7時に家をでてログのストーブの前で目をつぶ る。地球のエネルギーのようなものを感じるようとするとき、まずよくいく海岸の日の出 をイメージした後、近所の雑木林へふわりと浮いて樽前山麓の森林を頂上まで上り、支笏 湖でUターンして演習林、ウトナイなど勇払原野、そしてログハウスに着く。そこで個々 の樹木をイメージして終わる。                           鳥が逃げなくなったこと            平成15年8月30日(土)はれ 23℃ 黙々と林の奥から道端に丸太を運ぶ。これ、快感。 笹道と林道を一巡りする。いよいよ夏草が生い茂って林道に覆いかぶさるようになって きた。時折、アワダチソウやヨモギがかぶさって荒れた感じがこのところ表面化してき た。先日の大雨や強風で林がもまれたので落ち枝も多いからなおさらだ。一昨年間伐し た雑木林は、まだアッケラカンと透けてみえる。透けて見えることに不安を覚えるもの で、初めのうちどちらかというと強い間伐の決断には勇気がいる。          右は放置した林。ひだりはおととしの間伐あと。  どうもこの頃わたしが近づいても鳥たちが逃げない。庭にくるスズメなんか1mほど でも逃げない。林ではヒヨドリ、コガラ、シマエナガ、シジュウカラ、伐採跡地でノビ タキとあったが、逃げないから立ち止まってホーミー(のど笛、倍音の甲高い音程を出 す)を鳴らすと、彼らは本当に興味を示してわたしの周りを回りつつ様子を伺うのだ。 掛け合いをしていると結構時間がたつ。これはちょっとした交信ではないか。木と語り 鳥と歌えるとなると、もうかなり怪しい世界に近い。                 丸太を運んでからブッシュカッターで小屋の周りとアクセスを刈る。小屋に来る前に 厚真の斉藤さん宅でカッターの刃をサンダーで研いでもらったから、切れ味はすこぶる いい。                                     ブッシュカッターは2枚羽を使っている。

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雑木林だより 20