vol.1

霧の糸井公園を歩く

充実した緑と広場・マチづくりと歩む公園モデル・住宅地の歩道と連携した散策路



個人的な好みを色濃く出すことを目的のひとつとしたこのレポートなので、率直に私感を述べると、「最も身近で」「まとまりのある広さで」「樹木がしっかり生長して(直径30cm以上もあり)」「緑と広さのバランスがよい」ために、高く評価したい公園です。苫小牧には51.9ha、33カ所の近隣公園がありますが、5番目に古い…。やはり…。都市公園としての種類は「近隣公園」といい、面積は3ha。ちなみにここは豊川町の自宅からあるいて10分あまり。
(左の写真は道道から南望)

*(公園・緑地のデータは、苫小牧市役所から)

この公園を特徴づけているのは、北に隣接する道道双葉環状線の街路緑化と連続していること、および住宅地づくりのひとつのモデルとされるラドバーン方式がとられていること(いずれ市史ででもくわしく調べます)。ラドバーン方式は歩行者と自動車の通行を分離して閑静で安全な住環境をまもろうとするものです。

糸井公園のある場所は、もともと、しらかば町と日新町にまたがる区画整理事業
(公園の告示は49年)によって確保されたもので、公園はラドバーンの歩行者
道(緑道みたい)につながります。かつて、歩行車道は、家々の裏、いわゆる勝
手口と連結された状態で、歩道幅員のなかに若干の露地があったため、その空間
は住民の家庭菜園のように利用されていました。その菜園は工業都市苫小牧のな
かでなにか「農」のにおいのする、やや雑然としているがのんびりする、そんな
風情があったため、散歩するのが楽しみでもありました。公園と住宅地が一帯に
なっているような印象は、この緑道のおかげ。

もちろん、菜園や花壇は丹精を込めたものばかりとは言えないものもありましたが、
全体としては生活のにおいと都市開発の理想像が見え隠れする、そんなマチづくりの
ベクトルが感じられたものです。今回、訪れてみると、家庭菜園的なスペースはなく
なっており、歩行者道路は明るい色のインターロッキングに張り替えられていました。
公道にもうけられた菜園に一種の羨望を覚えてきたものにとって、これはいささか寂
しい景観になっていたのです。

●日新歩道橋からみる街路樹は10数年前にくらべると数m成長しており、公園の外周の緑に上手に連動しています。街路樹は中央分離帯がハルニレ(樹高10〜15m)とナナカマド、歩車道分離帯にオオバボダイジュ。計6車線の北側にはヤチダモの緑道が並行しています。だから、苫小牧の中でももっとも身近な緑がまとまってある生活空間と言えるでしょう。
(←霧の日に歩道橋から。右が公園)










●公園内は、北側(道路側)に野球場とテニスコートがあり、南側は芝生と
樹木のキャンパスになっておりこの中にはパークゴルフコースが作られています。

●キャンパスの中は薄暗いほどの緑の濃さになっています。さらに、サクラの並木づくりが進んでいるので、将来はやや樹木の密度が高くなるかも知れない。その際には、くれぐれも大木に育ったハルニレを取り除くことのないようにしたいもの。後に入れられたサクラを重宝がる人たちが、日陰を作る大木をのけ者にしたがるというケースを散見するから。むしろ、サクラを日当たりのいい林縁に配すべきだったのではないか…。

(←十分な広さ、大きくなった樹木そしてある程度のバラエティ、自然な園路、芝生…。また、町内会など地域が管理に加わっている風景と雰囲気も好印象につながっている)






●糸井公園の樹木管理がいいところは、力枝を落としていないこと。木の葉が歩行者の手の届くところにあるのがすごく心地よい。そしてなにより、樹木らが本来の樹形をもってのびのびと本来の樹木美を見せている気持ちよさ。下枝を切りたがる市民の手に落ちなかったことの守りの固さは賞賛できますね。

(鬱蒼とした木立とその先のグランド→)

残念なのは南東部のプンゲンストウヒ。これらだけは、木材生産を目的とした造林地のようにすべての下枝が払われて、プンゲンストウヒの本来の樹形が見えません。







(←緑道の菜園は、権利の上などでなにか問題があったのだろうか?こうしてみると、とても殺風景。広さや完璧さを追求するとついこんな風になってしまう。以前は、トマトなど野菜、草花がやや不統一ながら続いていた)

●折しも、トチノキの白い花がピーク。プンゲンストウヒ、イヌエンジュもアクセントとなっており、少なすぎず、かといってごちゃごちゃでないあたり、いいセンスだなあと思いますね。。








■そんな訳で、糸井公園はわたしにとってもっとも身近な、ちゃんとした公園といえます。
地域に密着した公園という意味でも、また、マチづくりという明確なデザインで創られた
という点でも、苫小牧らしい、苫小牧を代表する公園ではないか、と思われます。

■散策コースとしてみると、3haという広さでスポーツ施設(野球場とテニスコート2面)
を併設すればそう十分な延長は所詮無理。しかし、公園の園路は四方の歩道につながって
いるので、それらは一体的な散策コースになっていると考えていいと思います。そうして
みると、マチの中の歩行者専用道路というのは、すごいものです。

■ただ繰り返しになりますが、菜園の存在が醸し出していた「農」のにおい、排除して本当
に良かったのかどうか。歩道の一部を占めていた個別の菜園や花壇が、景観や街並みのうえ
でプラスであるという位置づけも可能だったのではないか?そうすると、公園との一体感は
さらに強まって、暮らしの中の緑はもっと息づいたのではないか、という印象でした。
(2001:6/16,7/9)


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