vol.3

ポロト湖の森で耳すます


東西に長い苫小牧の西側に住んでいるものにとっては、白老はとても近いマチ。温泉があり、海の魚介類も豊富で、
ポロトコタンという観光地もある。そしてわたしのようにフライでヤマメなどを釣りたいものにとって、
白老は格好のフィールドだ。私のうちから見ると順に社台川、白老川、ウヨロ川、敷生川、飛生川……。

そして降雨のあともほとんど濁りを知らないこれらの川を支えているのが、上流の森林。平坦地は
砂利採りがされているくらいだから民有地も多いはずだがその上は国有林。マチは海沿いに
ほそ長〜く横たわり、ポロト湖は中心市街地と森林をつなぐ間にある。春先、ミズバショウのメッカだ。

ロケーション

苫小牧の西となり。国道36号を室蘭に向かい白老に入って約4kmで右折。中心市街地をぬける道路を約1kmでさらに右折、JR線の踏切を越えるとポロト湖である。

沼と、それを囲むゆるやかな森林がセットになった穏やかな風景が広がる。右手前方に観光みやげ店と奥にアイヌ民族博物館がある。

自然休養林入り口は左手を回っていく。豊川町のわたしの自宅から、19kmでポロト湖の湖岸にたつ。週末のフィールドである苫東より実は近い。

←湖岸左手にこんな看板がある。ミズバショウ群落は左の奥、アイヌのポロトコタンは右手。







施設の設定の経緯

昭和42年、林野庁は国民の保健休養、森林レクリエーションの場として自然休養林制度を創設し、ポロト自然休養林は昭和51年に指定された。総面積401ha。北西から南東に伸びる細長い区域である。

キャンプ場や散策路、ビジターセンター、バンガローなどが整備されている。また、白老町が「白老ふるさと2000年ポロトの森」に位置づけ、自然休養林を取り込んでいる。
←看板の対岸にアイヌ関係の博物館などがあるポロトコタンが見える。

ポロトの森の特長は?

中心市街地から直近で、自然度の高い散策コースが用意されていること。ミズナラ、ハルニレなどの大木がミ
ズバショウの咲く湿地の園路沿いにそびえる。湿地群落は湿地林と混生し500種あまりの植物を確認できる。
 森林にすむ水辺の鳥「アカショウビン」が見られる、ことで一部で有名である(が残念ながらわたしはまだない)。

探訪記@ 5月4日 金曜日 はれ 12:30-16:00

うそろそろミズバショウの頃だ。家内と数日前にポロト湖のミズバショウを見に行こうと相成った。
帰りに、温泉によって、とおまけが付いた。子供達にも誘ったが、やはりにべもなく断られた。

 ポロト湖は苫小牧の西隣・白老町にある。自宅から20km弱で車で30分の距離にあるから、ちょうど苫東のフィールドとほぼ同じ距離と言うことになる。30haほどの沼とそれに注ぐ川の一帯が湿地林のようになっている。その両側は斜面の林である。中心市街地を通る道路から北上しJRの線路をわたると、もうポロト湖。メイン道路から100m前後で、湖のある異種空間に出られる。ちなみに役場も遠くない。市街地との近さという点で、ポロト湖のロケーションは出色、特筆に値する。  高速道路の下の車道に小さなパーキングエリアがあり、まず木道をわたる→



高速道路の下あたりからミズバショウ群落は圧巻となる。が、まだ1週間は早いかと思わせるような小さなボリュームだ。まだ新緑が芽生える前の広葉樹林は、しかし、とても明るく気持ちがいい。家内と、サブザックを担いで八つ橋をわたった。そして園路に入って左に折れて一周コースに入る。湧水の小川が実に美しい。簡易舗装されたつづらおりの小道は自然なカーブとゆるやかさが心を開放してくれる。時折、人とすれ違うのも安心のひとつだ。

 直径1m以上あるミズナラが園路沿いにあった。すごいなあ、いいなあ。高い山と匹敵する存在感である。こんな大木が園路沿いに数本あった。ビューポイントとおぼしきところは、沼の周りもそうだったが木製のベンチがある。つい座ってみたくなるがどうも時間がないせいか、その気になれない。
湿原を流れる川は透明。う〜ん、いいなあ→





 家内も久々の散歩だ。もうキャンプもあきたし、鼻水を垂らして山に登るのももういいよね…。このあたりは、十分山に登ってきた我が家の夫婦らしい会話になる。ずいぶん、人がいる。ビジターセンターあたりには車が20台ほど止まっていて、バンガローを借りている人もいる。民間施設でないぶん、宣伝もサインも必要なものばかりであるが、反面、みなれた官製の施設としかけである。それでいいような気がする。

 湿地林と、それを巡る緩やかな散策路はここの特長だ。ミズバショウとアカショウビンをはじめとする野鳥の存在も特長づけるものだ。ただビジターセンターがどこか、いやものすごく役所っぽいかも。入り口からセンターまでの間に手頃な駐車場がない、また、エントランスが砂利道でサインがはっきりしない、などに気がついた。だが、この緑は白老の人たちや近隣の人たちのもの、と割り切るとこの施設スケールは順当な規模ではないかと思われる。平坦な簡易舗装はバリアフリーだ→

 先にロケーションの優位性をあげたが、「人が精神を解放して憩う」という観点から見ると、そこにはひとつの限界がある。それは北海道特有のものではないが、森林公園が国有林の奥地と連続していることである。連続は、動物の往来にとって、すみかの懐深さでも優位であるが、つねにヒグマと遭遇する「おそれ」との同居になることがある。ここのところは北大演習林と同様、奥地につながる里山に共通する特徴である。
 野幌のような(山の自然から孤立しているが広大な面積を持つもので、かつ平地でアクセスがよい)都市林を身の回りに創ることの価値もあわせて考えていきたい。

←唐突にこんなミズナラの大木と出くわすと、思わず立ち止まってしまう。そうかあ、もともとこんなところだったのか…。てな、具合になる。そして、時に手をあわせて拝むのだ。


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