VOL.4 

2001,Aug 19

住宅地と隣り合わせる隠れたスペース 「有珠の沢の清流と雑木林」

〜期待と問題をあわせ持つ緑空間〜


■うまい水
苫小牧の水道水は旧厚生省の「おいしい水100選」に選ばれた実績がある。水源として使われている勇振川や幌内川、王子製紙が上水を取水している錦多布川など、いずれも樽前山や支笏湖方面の火山灰台地を伏流として流れてわき出しているのが源である。

 有珠の沢川はそんな数ある湧水河川の内でおそらく一番短い川であろう。清流でありながら、わき出してわずか3、4kmもしないで、スプリングクリークとしての生き様を捨てくやしいことに鉄分の多い濁った苫小牧川と合流し、太平洋に注ぐ。わき出て、合流し、海にフローするその間、わずか5km前後だろうか。

水深は浅いが、透明度の高い水がさらさらと音を立てて下る。





 しかし、清流である源流部、それは主として高速道路の上部にあたるが、比較的若い雑木林の中を深く土地をえぐり蛇行して有珠の沢町の市街地に至る。その様は、いにしえの苫小牧の原始河川を思わせるたたずまいであり、かつもっとも身近な湧水といえる。事実、身近なこの湧水を源頭に汲みにくる市民は多いらしく、いつのまにか、取水のための階段、水汲み用のステップ、管などが設備されている。

林道は樽前方面に続く

■雑木林あり

 この雑木林は、身近さ、民有地であるため土地利用が流動的であること、放置されていること、など「どこにでもある緑」の縮図だ。平坦な身近な緑の民有地はバブルの時期、まず、ゴルフ場として白羽の矢がたったが、ここも例外でない。幸か不幸か、土地所有者の都合でゴルフ場計画は破綻し、噂では不動産として売買されたと聞く。ゴルフ場計画のあった林の周囲は、王子製紙の山林のようだ。
 
 わたしは身近な緑の典型として、是非この雑木林が公共の緑地にならないか、切望して状況をながめてきたのだが、今に至って、その資質は依然として群を抜いて高く、手入れをして苫小牧の里山に仕立てられないかと願うものだ。
 
流れ二態


左=湧水部分にできた階段。これでアクセスが容易になった。右=この蛇篭から水がわき出る。水温は九度。

■ロケーション

ちなみに我が家から車で5分、地域の人たちは散策などに訪れる。現状と課題をまとめると下記のようになる。
●小規模な清流の河川と、平坦な雑木林の混在モデルは苫小牧に希少。住宅地と隣接するロケーションは得難い。
●林は手入れされておらず、放置イメージが荒廃を加速している。潜在的ゴミ捨て予備軍が絶えない。
●立木密度が高いので、夏の林は、非常に薄暗い。逆に冬は明るい快適な林に写る。
●公共緑地として買い上げ、典型的な苫小牧の雑木林として保全するべき。その際は河川現況をできるだけ維持し、林相の改良を行う。
●公共の買い上げを、市民サイドで意見を提出すべきか。貴重種や群落などが存在するのとは違い、苫小牧の山沿いに普遍的に存在してきた里山的環境のひとつだけに、従来の自然保護運動家のメガネには適わなかったもの。
●その際は、「平坦な雑木林・苫小牧」をアピールする。

注)有珠の沢の雑木林は、都市緑地や森林公園ではなく一般民有林であるため、所有者や面積、その他関係する資料収集はしなかった。あくまで、見て聞いたことを個人的見解でまとめたもの。

高速下の入り口かいわい。例によってクマ注意の看板あり、雑然としている。


ホーム  探訪記トップ