手仕事の現地から

NO.13
2002/01/03〜03/17

ここでの単独の作業は、深い充足感を味わわせる。
しかし、ある程度、実効性を考えた「美しい雑木林の実現」という
現実目標をかかげてみると、残念ながら、誰でも気軽にできる
環境ボランティアの作業ではないのが骨身にしみてわかる。

ツルツルの路面、車がうまりそうな雪深い林道、鼻水が凍る冷気、
危険そうにみえるチェンソーの操作、そして重労働…。
こう並べただけでもわざわざやる作業ではないなあ…。やっぱし。

だから誰も誘わないようにしている。
が、この厳寒の営みを雪のない、平坦なこの地だからこそできる
究極のアウトドア、と位置づけたい。
ま、カライバリみたいもんだけど (^_^;)



平成14年3月17日(日)くもり 外7度C                    室内を20度にしてから着替えしてストーブの通気口を閉め、昼に戻ると室温は18度。 これはやっぱり春だ。なんか、ちょっと気がゆるむ。                  作業の途中にイアマフをとると、ケーンという懐かしい声が聞こえた。そう。クマゲラ である。作業している地点の北西200mあたりから聞こえる。次の休みでは南の方から 大きなドラミングが聞こえた。ログのそばのカラマツには、やはり大きな食痕があって先 日より大きくなっていた。また、地面の根っこの部分もつつかれていた。 穴の縦の長さは15cm近い。周りも剥ぎはじめた。 下に落ちていた木屑。長さ5,6cmある。 今、林道のみ氷。林の中はナニワズ が咲きかけている。  作業の途中、倒した幹がちょっと太股にふれた。ほんのちょっとだったと思っていたが、 しっかりした打ち身のようだ。だんだん、痛みが出てきた。              平成14年3月9日(土) くもり時々はれ 中−5度c→20度、外0度c      午後用事があるので7時に家を出た。ログの周りは、マガンヒシクイたちの声でにぎやか だ。と、ガーン。銃声。厚真の田圃の方からだが、間伐に入ってからも5,6分ごとに聞 こえる。田圃に舞い降りてくるマガン・ヒシクイを散弾銃でねらい打ちするのか。一網打 尽というやつだ。天然記念物として渡りを繰り返す彼らもまさかの惨事だ。作業の途中、 たまらずウトナイのレンジャーに携帯で連絡し、警察への通報などしかるべき処置をお願 いした。                                      ログの北東のカラマツの倒木に大きなキツツキの食痕がある。高柳さんが見たものと  同じかも。たて12〜13cm、よこ5〜6cm、深さ7,8cmある。比較的新しい。 要観察。                                     平成14年3月3日(日)はれ 外2度C 中マイナス5度C→25度C          早朝の我が家の庭はマイナス8度Cだった。寒のぶり返しみたいだが、暖かさのベクトル  というか勢いにはとうてい逆らえず、昼頃になるともう春のようなうららかさが隠せない。 したがって、作業はちょっと暑い。                         昼前、北大チームの5人が来訪。ちょうどわたしはチェンソーにガソリンを補給し、目   立てをしていた。カラフルなファッションで林が若返る。メンバーの何人かがこの春北  海道を離れるとか。で、記念撮影。                        ●今日はぶらぶらと柏さんと冬芽をみたり、木にのぼったりしました。また、染料にすべ くキハダの内皮を採集し、リースをつくり枝を採集しました。東京の狭い部屋に飾ろうと 思います。午後はホットサンドイッチをつくりつつ、川嶋さんのもってきたツリバナの幹 で、みんなはお箸etcをつくっていました。わたしはすぐあきらめ、ずっとギター&リコ ーダーをやってました。合間合間に、育林コンペのこと、植樹のことetcを先輩方に聞け、 良かったです。 高木                               ●4月に札幌を離れるので、最後の雑木林かな?今日は林をながめて、小屋に落ち着いて、 板を削って…、のんびりの雑木林を堪能しました。本当に雑木林に通い初めて、いろんな 世界が広がって、わたしにとって特別な場所でした。草苅さん、本当にありがとうござい ました。きっとまた顔を出すのでよろしくお願いします。 好田            ●今日は北大チームの林を歩いて回りました。クロスカントリースキーで雑木林を歩く予 定だったのですが、札幌に比べると苫東はやっぱり雪が少なくて、できませんでした。昼 ご飯は、ホットサンド、焼き芋、桜餅でした。そのあとは、細い木で箸つくり。いろいろ できて楽しかったです。また来たときはよろしくお願いします。 柏          ●雑木林のまったりした時間ももう最後かも。道内勤務ならまた来るぞ!木にふれる時間 は楽しかった。 矢野                               ●ほんとに久しぶりに来ました。またのんびり幸せな時間を過ごせました!草苅さん、今 度来たときは山の手入れ、お手伝いしたいです!また来ます。 〜チェンソーを使い初め てはまっている川嶋より〜                     
平成14年2月24日(日)11:40 うすぐもり&小雪 外5度c、中7度c 久しぶりのログです。(今年になって初めてかな?)林道に少しつもった雪にはタイヤの あとがなく、今日このエリアに立ち入ったのは自分が最初のようです。薪ストーブでお湯  が沸くのを待っていますが、果たしていつになったらコーヒーとインスタントラーメンに  ありつけるやら…。  NUKE                            平成14年2月23日(土)晴れのち雪 昼過ぎ外は5度c              ●朝、ログの室内がプラスだったのは今年初めて。林道はまだ雪道だけど、雪の下が水た まりになりかけている。凍結した土壌が不透水層となってこれからしばらく、苫小牧の林 道は、うむ。南向き斜面は、ササがでていて、雪の消えた箇所ではナニワズの花芽が見え た。春はそこまで来ている。林に隣接する厚真の田圃に、マガン・ヒシクイが来てるかと 立ち寄ったけど、さすがにそれはまだだった。                     林道から少し離れて作業をしているので、なにか、世間から隔絶された感じがある。タ コツボのような世界で何を黙々と働くのか、という声が聞こえそうだ。それにはこう答え よう。                                       @作業は思い描いたプラン(シナリオ=「手入れされた雑木林モデルをつくる」「1人   でできる森づくりを実践する」)のうえにあること。だから、全身全霊を打ち込める ワークになっているから。                          A手入れの産物=間伐した木材をログの薪などにエネルギー循環して無駄にしないこと が気持ちよいから。                            ●育林コンペのほかのゾーンを見回る。ずいぶん、枯れた木が目立つ。とくに平木沼のそ ばがひどい。開けた平木沼は、夏の南南東の潮風がまともに侵入してくることも関係して いるかも知れない。間伐した箇所もしない箇所も幹の先端が枯れ落ちている。以前、札幌 雑木林ファンクラブのゾーンで、リーダーの孫田くんが「間伐したもののほとんどがすで に腐れが入っている」と言っていた。混みすぎて、枝をふれあう樹木は、枝先がモニョモ ニョと縮れてくるが、そういう個体は例外なく腐れはじめているのを知っている。混みす ぎて自殺するようなもので、間伐はそんな時期までにやっておきたいものだ。あの、モニ ョモニョは樹木たちのストレスのサインでもある。ここで長らく森づくりに携わった厚真 の斉藤泉さんは、「寿命もあるぞ。萌芽させて若返ろうとするんだ。」と言っていた。  平成14年2月16日(土)はれ                          朝、路面はツルツルで、ログにたどり着くまで一時間近くかかってしまった。林の中は、 しかし、動物の足跡が急に増えて、キツネ、ウサギ、そしてなんかイヌのようなのも見え る。春だ。トビが鳴きながら旋回している。                      朝、一番にホオノキを伐採した。瞬間、大きな切りくずが出て、目立てが良くできてい るような錯覚に陥る。材がとても柔らかいのだ。そして芳香。辺り一面とてもいい匂いが ただよった。作業は林道からどんどん奥へ入り込んで沢の方へ緩やかに下り縁についた。 そうだ、このまま沢までをエリアにすれば区切りもいいし、もう一年ここでやる仕事がで きる。ひとまとまりの仕事があることがとてもうれしくて仕方がない。          と、作業場からログへの帰り際、つたもり山林の方角からなつかしい声が聞こえ、こち らに近づき、枝越しに独特の飛翔が見えた。クマゲラのようにみえる。もしそうなら、平 成8年以来の6年ぶり。この辺にいてくれればいいけど。               平成14年2月15日(金)                             先月苫小牧の講演会でお会いした札幌の高柳です。一日冬休みが取れたので写真撮影と 雪上ハイクでもと思って初めて雑木林に来てみましたが、今までホームページでしか知ら なかった林の雰囲気が良くわかりました。                      高柳さんが送ってくれたこの日のログの画像。 ログについたキノコ。高柳さんによると、このキノコは 取って早急に防腐処理をすべきとのこと。  1時間ほど林道を中心にして林の中を歩き回り、ケアセンターに戻ってガスコンロでお湯 を沸かし、テラスでカップラーメンとおにぎりの昼食をとりましたが、ときおり鳥の声が聞 こえるだけの静かな林でのんびりとしていると、なんとなく肩の力が抜けていくようなリフ レッシュした気分です。機会があったらぜひまた来ます。                PS:手入れのされていない林の、大蛇のような蔓に絡まれた木の姿には心が痛みます。  ツルにからまれたカラマツ。わたしも可哀想に思っていた。 保安林だから放置してものです。保安林はなんか気軽に手入れ というわけに行かない。まして他人の土地だし…。 平成14年2月10日(日)はれ                          昼、作業を終えてログに戻ると、わずかだが朝のオキ火が残っていた。その上に薪を4本 のせて1秒2秒3秒4秒5秒…、ボッと火がついて燃えはじめた。            カップ麺のお湯が沸くまでの10分ほど、ベランダでチェンソーを分解して掃除し、目 立てする。最後に来週のための燃料を入れておく。                   作業の方は、欲を出して奥のヤブを手がけたため、またもやくたくたに疲れた。腰の調 子が悪いので無理しないつもりできたが、作業は勢いだ、つい重い丸太を何本も運んでし まった。しかし、この達成感は何と言えばいいのだろうか。立派に表現される世のために なりそうな仕事や奉仕、そしてさまざまな動機に比べて、まったくなんてことのないただ の山仕事・力仕事だが、この単純な「林の手入れ」は手応えのどっしりした達成感と言う ヤツを含んでいる。                                 昨日、一昨日は東京にいた。人ごみはサービスを求め、確かに雇用の場をつくるが、一 日の終わりや休日に人間らしい環境に戻ろうとしてもあれでは緊張は解けない。ベルトは きっちりしめられたままだ。人はいずれ、自然度を兼ね備えた地域の中で仕事をするのが 自分を生かしいた正しい生き方だ、と悟る時がくる…、かも知れない。きっと、来る人の みにくる、というのが正解。                           


雑木林の手入れの基本は、まずこんな風に数本萌芽した幹を1,2本に
減らす作業だ。手入れが遅すぎたため、残った木の枝ぶりは悪い。本当
は1本にしてもいいのだけど、空があきそうなので、思いとどまった。
奥の一本は、癒合していたので切り口が高い位置になった。     

今日も堅雪だった。現在手がけているエリアがフィニッシュに入りつつある。今日からは
ミテクレを考慮した仕上げの作業に入った。枝先のふれあい加減、大きな木と中ほど(中
層)の木々がいろいろ混じっているような、そんな林に近づいて満足している。だが、片
づくことが切ない。整理がすむのはうれしいけど、終わらないで欲しい…、とつい考えて
しまう。考えてみると、わたしの仕事を待っている林はもっともっとほかにもあるのを知
っているのに、そうなる。これは林とわたしが「つきあった」せいだ。人と木として。


もう大分かたづいた。と思ったら記念写真を撮りたくなった。ボンネットにデジカメ
のせて、気取る「ワタシ」、チェンソーそして林たち…。首の日本手ぬぐいに注目。
これは冬の必需品だ。ファッションは3Kと田舎風のミックス。しかし、機能的に。

平成14年1月26日 (日)快晴 朝の気温:外−6度c、中−5度c        かた雪になった。林の中はとても歩きやすく作業がはかどる。ついついピッチが早くなる のか、ひやっとする場面が2,3回。どってことないのだが、しかし運が悪ければ怪我を する。ようするにちょっとした読み間違いをするのである。倒れかけた木の予想外の動き。 状態を良く読まないでチェンソーを入れるため、起こるのだ。木全体の枝と偏り、根本の 曲がり、周辺の木々との重なりなど。たしかに同じ状態はない。すべて違う。      平成14年1月20日 (日)快晴 朝9時過ぎの気温:室内外ともマイナス11度c  煙突からまっすぐ煙が上る。無風のマイナス11度は寒くない。 マイナス11度からプラス20度まで上げるのに、割った30cm長さの薪10本ほどが要る。 ●天気 good !! 気分 very good !!  ちばかおり(6歳)&父親・直樹       ●センター試験に向かった娘を見送り、やってきた。自分の受験ははるか昔の話だが、そ うか、一世代とはこのくらいの時間をいうのか、という変な実感がある。         今日で苫小牧レクリエーション協会のゾーンは、道沿いは一段落した。あとは奥の方を ちんたら春まで片づけよう。昼前、千葉さん父娘が手伝いにやってきた。材を道のそばま で運んでもらった。とてもおなかがすいており、小屋に戻り薪ストーブを囲んでの昼食。 トングで薪を運ぶ千葉・父。見守る娘・かおりちゃん。 かおりちゃんは小屋に着くとすぐジャンバーとセーターを脱いで、 キティーちゃんTシャツ姿になった。左のナキウサギの写真は fmの中村さんから、ログ用にと頂戴。 3人はにぎやかだ。食後、動物の足跡探しに出かけたが、何もない。膝までの雪をこいで 林の中に入ると、キツツキなどの穴と巣、直径45cmのコナラなどを発見。ps:帰途、 千葉さんはキジを発見した模様。                          
平成14年1月14日(月) はれ 朝8時の気温内外ともマイナス5度        ここのところずっとイスに座って固まったせいか、ヘルニアと座骨神経痛がうずく。重い 伐採木をひきずるというのも、何かヘルニアには悪いような気がする。しかし、全体的な 身体の運動に、今のところ間伐はなっている。上半身に筋肉が付いて、冬になると背広が 窮屈なのだ。                                    今週末、林を語る時間をもらった。市民の方のほかに木材や森林関係者など、いわゆる その道の方々も大勢聞き手に回るという。これはプレッシャーだ。だけど、これはやはり いい機会だと感謝したい。1時間半はまとまった時間だから、画像をたくさん使って、こ このフィールドとこころの林のイメージを伝えられれば申し分ない。         


平成14年1月12日 (土) はれ 13時の外はプラス2度c           作業のさなか、高さ4mほどで枝振りのいいカツラを見つけた。今の作業ゾーンでは初め ての発見である。正直うれしい。海沿いの地にあまりなじまないのか、カツラは決して苫 東に多くない、むしろめずらしい。これは大事にしてあげねば、と周囲を見回す。光が当 たるようにして、競合する樹木を間引いてあげる必要がある。と、わきに背比べをしてい るホオノキがあった。本来ならホオノキは残していくのだが、今日のところはやむを得な い。クラフト用に材をいただくことにした。                      ゆうべ、新年会をふたつ掛け持ちして帰りは最終列車だったが、今朝のチェンソーワー クで酒がすっかりぬけた。昼遅く、仕事をおえてチェンソーを片づけて、なんとなくビー ルがあったらいいな、と頭に浮かんですぐかき消した。山の仕事はいい。     


平成14年1月6日(日) はれ 11時                      今朝8時に来たときも外はマイナス12度cだった。数日、日射があり降雪はなかったの で、林道への車の乗り入れは3日より大分楽になった。シカのハンターも車も通らず、今 日は作業箇所まで車を乗り入れた。無風でピリピリするほど冷え込んで気持ちよい。    現在の作業ゾーンはもうすぐめどがつきそうだ。作業の歩掛かり(1人で一日どれくら いやれるか、単位面積何人必要か)を考えてみる。薪をとるほかは枝の集積をしない方法 で行けば、5000uを半日仕事で20日(4日/月×シーズン5ヶ月)、フルタイムであれ ば1人で10日あれば十分かと思う。作業を行う際には集団は危険であり、レッスンでな ければ伐採は単独か、離ればなれの2,3人がベター。しかし、個人の都合に合わせて好 きなときにやるというのが長続きするスタイルだ。というわけで、現在のわたしの仕方に たどり着く。多くの林は荒れ、手入れを待っている。しかし、無償で動く動機のある人は 極めて稀だ。                                   平成14年1月3日(木) 12時 くもり                     零下12度の外は気持ちがいい。積雪は30cm。稟としている。 年が明けた。年末に作業ができなかったので、今日は7時過ぎに家を出て張り切ってやっ てきたが、林道は雪がたっぷりで車の進入を阻み、小屋の周りはマイナス12度、内部も 当然10度を超えようとしていた。                          現場は枝にたっぷりと雪をのせていて、木にふれて揺らしたりチェンソーを入れたりす る都度、その雪が頭や背中に落ちてくる。さすがにチェンソーのエンジンのかかりも悪か った。                                       すぐたっぷり汗をかいた。毛糸の下着とジャンパーの2枚でマイナス12度は寒くない。 そんな中で作業しながら、森林ボランティアなどというけれど、こんな風になって森づく りの担い手を買って出る人は、実際のところ「いない」のではないか。物事の優先順位の うえで、週末日常をこのように過ごし深い満足を得るためには、かなり十分な遊び三昧と 深い屈折が必要だと思うのである。                        


手入れをした林に雪降り積む。横殴りの雪だったようだ。


向かい側の放置した保安林はというと…。



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