手仕事の現地から

NO.16

2002/09/01〜

ササを刈って道づくりを始めた。枯れたササなどを
踏みしめる音は、しっかりと五感を刺激する。オレ
はここを歩いているんだ、と自己主張もする。樹木
と近くなったような気がする。そうだ、今の林は樹
木との接近という点ではどうも壁があったのだ。大
木の根本に座って背を持たせかけられるような、そ
んな仕掛けにしてみよう。「木のヒーリング」に出
ていたエクセサイズができるように。      


11月16日(土)晴れ 外−2度、中−5度c                    小屋の周りはとてもわたしがイメージする里山らしくなってきた。萌芽を切ってササを 刈って開けてきたこと、そこへ一面に落ち葉が敷き詰めてあること、小屋や薪やその他の 人工物が適度にあること、などのせい。早い話が、人のにおいがするようになった訳。里 山はそれに尽きる。                                葉が落ちた里山は素敵だ。これから雑木林の明るい季節が始まる。  樹木別に気のエネルギーをわたしの手のひらで感じているところ。この春からここでも 町内の散歩でも職場のそばの北大のキャンパスの散歩でも必ずやってきてわかったことは 意外とニセアカシヤが感じやすいこと。イタヤカエデもそう。ハリギリ、ヤマグワなんて のは意外性あり。                                  *このあとブッシュカッターが不調で、市内の田中林業に修理に持参すると、ベルギー 製の20年になる薪ストーブが頑張っていた。ハスクバーナとともにスウェーデン製の薪 ストーブを販売してきたらしい。今はデンマーク製を取り扱っていて勧められた。    11月9日 土曜日 4度c 曇りのち雨   いよいよ冬到来である。苫小牧など以外のところでは雪である。ここでも木枯らしがふ いてコナラの葉っぱがさわさわ落ち続けている。  いつもこんなに寒くなってから、ストーブの不具合に気づいて煙突掃除をやむなくされ る。意を決して横の煙突をはずし粒状のタールを箱に受ける。ログハウスの外の煙突は外 すすと粒々のタールが混じった状態。これは今回出た量の4分の1. の梯子をのぼってふたを開け掻き出した。L字型の曲がり部分がもっともきつく詰まって いた。試運転。新聞が燃え、火は小枝に移りぱちぱちはじけ、1分後、ごーという燃え始 める音が聞こえ始める。成功だ。ちょっとした達成。パソコンの不調を克服した時より、 遙かにわかりやすい、ずっしりした重みがこのような手仕事にはある。 11月2日 (土)晴れ時々みぞれ モミジがずいぶん落ちた。それらを踏んで割った薪を運ぶ。わたしゃあ、詩人になる… 割った薪を積むところがなくなった。あとは縁の下か。 林道の水たまりが凍っていた。いよいよである。紅葉はシラカバやイタヤカエデが葉を 落として、モミジの一部がコナラの紅葉の中で奮闘している。カラマツの保安林の間伐を することになったので、たき付けの枯れ枝探しをかねてどんな状況か回ってみた。38年 前後の樹齢だと調査簿には書いてあるが、なるほどその程度に見える。ただ、被圧されて 細いものも多く、それらを整理すると大分変わってくるだろうと思う。  ストーブの火付きが悪いので2階の煙突をたたいてみると「ゴボゴボ」。タールのつぶ のような砂状物質が詰まっているのだ。来週は、煙突掃除だ。 10月26日(土)はれ 朝9時は10度ほど                    紅葉がきれいに決まると、いつ冬が来てもいい、という気持ちになる。 22日ころ、樽前山に雪が降り、24日だったかは初霜。紅葉は一気に進むはず、と思っ てきたが、コナラはまだ緑のものが多い。小屋のガラスを磨く。今日は、白老からお客さ んが見えるのだと思ううち、窓の汚れに気が付いた。勉強会のいつものスタッフも、まあ お客様ではあるがなんとなく甘えてしまっている。そうか、これからはいつも窓をきれい にしよう。外を見る窓ガラスがきれいなのは気持ちがいいものだ。           たき火で正面ばかり熱いが背中はやはりちょっと寒い。  白井さんと大須賀さんが10時半前に、清水さんがその前に来訪。無風の好天だからと 急遽外でやることにし、イスとたき火を用意する。今日の勉強会は「アイヌの人が森に入 るとき」。詳細は後日「林とこころ」にアップの予定。大須賀さんのカムイユーカラを拝 聴。雑木林で数人でライブを聴くというぜいたくをさせてもらった。          カムイユーカラを歌う大須賀さん。晴れ着に着替えてくれたので、雰囲気はいやます。 10月19日(土)はれ 13度 13:30                    紅葉が美しい。特に間伐したゾーンのみモミジが真っ赤になって、非間伐ゾーンはくすん でいる。このコントラストは大分はっきりしてきた。まだコナラが色づいていないのでこ の1週間の寒気で26日あたりに紅葉のピークが来るかも。              小屋の前。そう言えばカラマツの葉が緑だ。 一仕事おえた初老の自称「木こり」。精魂込めてやりすぎ 夜から猛烈な腰痛に悩むことになるとはつゆ知らず。注= 青いズボンは破れているのではなく、はじめからお尻のな い、チェンソー作業用の前掛け。            雑木林における間伐・非間伐の実験はこんな風にはっきりと 出るようになっている。                  ついに薪切りが終わった。積まれたままの状態でできるだけ切りまくる方法を採用した ら、かなりはかどった。しかし、チェンソーをかけっぱなしの1時間半は、腰を悪くして しまったみたいだ。11時からはチェンソーをブッシュカッターに持ち替えてサクラとカ ラマツの大木のまわりのササとウルシなどの灌木を刈り込む。小屋がスッキリ見えるよう になった。来春はササにじゃまされていた草本の発芽が見れるかも知れない。      10月12日(土)快晴 12:10                        出てきたクリタケ。食感がいいので今日の夕食に頂戴しよう。 ・ドイツのバートウェーリスホーヘンから戻って1週間がたった。見慣れたわが雑木林は 混然、雑然としているけど、統一されていないやわらかさを備えており、これはひとつの 取り柄といっていいとあらためて思うようになった。ドイツの森林など風景の美しさの中 には、統一、単調、整然などの特性があるが、ここにはその種のものはない。むしろその 反対概念の渾然一体となった植生景観である。神道ではいろいろなものを入れる器を「雑 器(ざつき)」と呼ぶそうだけど、いろいろな植生の存在を認める入れ物、雑木林とはよ くいったものだ。                                 ・10時ころ、北大演習林の日浦さんご夫妻と赤ちゃん(かわいいなあ)が来訪。演習林 の川の様子、ヒグマ、苫東のコナラと緑地などについて立ち話をする。やはり、木の上で 鳴いているカエルはアマガエルらしい。演習林ではアカショウビン(赤い大型カワセミ) に補食されるらしい。そう言えばそんな写真をみたことがある。ある原稿用に奥さんがわ たしが薪割る姿を撮影。薪の山が結構なボリュームになった。             帰り際にあわてて記念撮影。雑木林に日浦さんの赤い車がよく似合った。 9月21日(土) 快晴 11:30 20度c                   ・ようやく薪の3/4を切り終えた、フーッ。大体この小屋の2シーズン分ほどあるだろ うか。これでは貯まるわけだ。                           ・道づくりに続いて、小屋の周りのササ刈りを始めた。こうすると樹木の根元が見えるよ うになるのだが、根元が見えると木の全体が見え始める。そこで自分と木の間がぐんと近 くなる。原野にたっているイヌコリヤナギの藪でも、周辺の雑草を刈って藪の足元を見せ るようにすると鑑賞にたえる造園木に変わる。そんな効果をこのササ刈りはもっている。 ・来週からドイツの林をじっくり見て、一週間を暮らしてくる予定。調査でも視察でもな い、ただの個人的な体験としてである。そんな体験から発想したい。          9月14日 快晴 昼過ぎ24度c                          ブッシュカッターの不調原因がわかり簡単な修理を施したら、快調なエンジン音が戻り エンストがなくなった。その勢いを借りてササを刈る道づくりプロジェクト「北ルート」 を刈り進む。比較的太いコナラが多い林に入ったので、できるだけ大木を巡るように道を 創るようにしたが、どうもこれがコツのようだ。大木に寄ってみたいし、もう一つの理由 は、大木の周りには、隠れた切り株がない。ブッシュカッターの仕事が安全なのだ。小さ な沢を越えて結局400m近い刈り込みとなった。                  文明の利器、チェンソーとブッシュカッター。結構助けになる。 ホオノキは切りやすいが、薪にはちょっと勿体ない。 だれかに彫り物としてあげたい。 刈り払いの時、ホオノキの存在感につい刈り残してしまう。 直径30cmを越え40cm近くになるとすごい迫力ある。奥には小屋。  小屋に戻り積んだ薪のそばに寄ってみると、ヒシヒシヒシヒシと鳴っている。気持ちの いい秋晴れの乾いた空気に、薪が声を出して乾燥している。本当にヒシヒシヒシと鳴って いる。薪づくりも馬力よくこなした。あと2,3時間やれば終わる。しかし、ブッシュカ ッターとチェンソーをあわせて3時間ほどの作業は、さすがに疲れた。          日向のベランダでイスに座ってリラックスしていると眠くなる。と、100m東のカラ マツ林あたりでケーンというクマゲラの鳴き声が聞こえた。この冬の間伐以来だ。    9月7日くもり 2時半                              「林とこころ」の8回目勉強会。林と人の間柄を追っていくとどうしてもスピリチャルな ところへいく。今日は思いっきり各自の過去の思い出も掘り起こしてアブナイ話をうんと した。早めに来てボリボリを探したが、まったく見つからなかった。終わってから小屋の 北側に道を作り始めたが、ブッシュカッターの調子が悪くエンジンが止まってしまうので 手鎌に替えた。                                  9月1日(日)曇りのち雨 22度                          雨などで2週間ぶりとあいなった。風がなくて蒸し暑〜い林では、カエルが鳴いていて、 ナラタケがたくさん出始めた。ササの中にぽつんぽつんと見え、時々古い間伐材のしたな どに固まりがある。今年、初めて見つけたのは7月。今まさに、一気にピークに近づこう としているようだ。                                 薪づくりのあと、小屋の周りと新しい刈り分け道で夕食2,3回分のナラタケを採取。 薪づくりは15分したころに上半身汗まみれになって、「えーい、ままよ」と伐り進んだ ところ、大分、薪の山は小さくなった。このまま一気に切って、あとは「割る」「積む」 楽しみだけに特化しよう。薪の長さに切る作業はちょっとだれるのである       



home
雑木林だより15
雑木林だより17