冬に向かって枯れていく有様はどう見るか、さびしいか、恵みか

NO.27

2004/09/04〜


勇払原野のベースカラーは茶色系だ
土が凍るから晩秋の色が半年続き
晩秋の色というのは、原野などの禾本科植物の実りのいろ
この茶色系を嫌がると、途端にこの風土が厭に見えてくるとおもう

茶色系…、これは大人の色だな、やっぱし



クマゲラがいた                  10月30日 くもり 15℃ ああ、いいなあ。この感じ。激動から静寂へ波状に移行する季節。 少し寒くなって職場に本格的な暖房が入った日に、鼻の粘膜が乾いていると感じたときか ら、少しずつ風邪の症状が出てきた。今週はどこへも行かず養生しようと決めたのだが、 林だけは行ってみようと日の傾きかけたころやってきた。紅葉はやはり先週がピークで、 今週は紅葉のステージはほころび、その代わり林道はもみじ交じりの葉っぱの絨毯が敷き 詰められている。そこをゆっくり後ろ手をして歩いてみる。たそがれ時の林道は格別だ。 わたしの好きなカラマツの大木。  帰途、つたもり山林の大好きなカラマツから気をもらおうと抱きついていると、ケーン と懐かしい呼び声がした。わたしの名前をケンと呼ぶ人がいるので、この語呂は他人の気 がしない。大きくキョキョと鳴きながら付近を飛んでいる。数10メートル離れたハルニ レの枝に懐かしいシルエットが見えた。そばの山ノ神にお参りしてからクマゲラのいるあ たりを遠巻きにして小径を歩いてみる。薄暮はますます妖しい明るさに変わってきた。  歩きながら路面を見ていると、落ち葉の混じり具合は刻々と変わる。ああ、早々にホオ ノキは落ちたね、センノキもやっぱりね、などと思いながら樹冠をみると案の定そこには それらが厳と立っているという具合だ。でも圧倒的に多い落ち葉はコナラ、ヤマモミジな どである。  坂を下るとクマゲラはまだシイタケの乾燥小屋の辺りにいた。歩みを止めて石になると クマゲラは右手上方10mあたりでかくれんぼをしている。そのうち、ヤチダモの幹に移 り昔からある穴へ飛びついた。えっ、まさか。そう、このクマゲラはかつてからできてい たクマゲラ御用達の巣穴を再利用していたのだ。十分に警戒してから、ためらいつつ穴に 入って出てこなくなった。この人懐こさがクマゲラやキツツキ人気の秘密だと思う。  


樽前山に初雪が降り紅葉が進んだ   10月23,24日 (土日) 日曜は晴れ、無風   紅葉がここまで進んだ。来週は葉を落としているだろう。 天気予報どおり23日の土曜日から気温も下がって、雨と風の荒れた天気になりそうだっ た。山の友人と小屋で飲み会を催す予定にしていたので、まず小屋によって鍵をあけスト ーブに火をつけてから厚真に「きらら」の新米(玄米)を受け取りに出た。帰ったときには すでに友人は薪に火をつけイスを準備し料理の仕込を終えていた。この辺の段取りはさす が山仲間だ。  薄暮から温度がグンと下がってわたしは毛糸の下着に替えた。紅葉はぐんと進んだよう に思う。数日前に見たニセコと中山峠の紅葉はしょぼくれた物だったが、ここは結構いけ る。間伐をしたところはさすがだ。                         いつものことながら、夜がふけるのは早い
 夜になって携帯でもう一人声をかけると7時ころ到着。自営業をやや早めに切り上げて の参上。外で11時ころまで焚き火にあたり飲む。何を話したか、ほぼ忘れるほど、開放 的な完璧な宴だった。シェフのまかないはいつもどおり上出来だった。朝、1時間ほど散 策にでる。シメジがでているかも、との読みもあり籠を持参する。二人は高そうなカメラ を持っていた。ここの雑木林らしい素顔があちこちにあり、改めていいところだと自信 を深める。                                   


林道とささみちを縫う

紅葉の気配がない                      10月17日(日) 快晴 ようやく、朝は10度を下回るようになった。しかし、雑木林はヤマモミジと木ウルシが 赤いだけで、錦秋の彩を見せる気配がない。いつもなら10月20日が紅葉の標準的なピ ークであり、その前後にはそのニオイがしてくるものだ。それが、長引く温かさのせいで 変化が遅いのだ。                                 ガマズミが美しい このところ、耳鳴りのような状態が続いているところへ静寂が重なってシーンという二重 の耳鳴り状態。これも悪くはない。葉ずれの音がカサコソするので、ああ秋なんだなあと 音から季節を感じている。それと斜め光線。ログに当たる午後2時半の光線は、もう十分 たそがれている。これから、エネルギーはか細くなってくるのだ。ちなみに、まだ、チェ ンソーを持つには暑すぎる。                           


山の神に本を捧げる                       10月9日(土)くもり 林が黄色がかってきた。物悲しいような、そんな気配、空気。 拙著「林とこころ」が出たのも、苫東の雑木林との付き合いのおかげだから、一帯の山を 見守るツタモリ山林の山ノ神に形ばかりの奉納をして、感謝を捧げる。誰もいない鳥居の ある広場でかしわ手を打つ。掌の音は、車の騒音にかき消されそうになる。そんなかぼそ い神事だった。風もないので大好きなヤチダモの大木をゆっくりなで、カラマツの大木の 根元に座ってぱらぱらと本をめくってみせる。深呼吸をすると気持ちがいい。  この本は、ログハウスにおいて置こう。ログはこの里山の核だから。そしてわたしたち の止まり木である。ここがあるから、周辺が里山に変わってきたし、"手自然"が生まれた のだから。 山の神に挨拶した拙著。ノートも新しくなった。  夕方から札幌に出かけて園芸療法の講演会に出る。その前にフットパスを見て回ろうと 歩き出すと、道端に元気のいいきれいなナラタケを見つけた。仕方がない、頂こう!車に 戻ってかごを取り出し、せっせととり始める。傘一面に毛の生えたやつ。大ぶりも小型も 混じってまったく痛んでいない。今年のナラタケは3つの山場があったような気がする。


NPO「がるだする」の4人が取材に      10月3日(日曜日)くもり 10:00---14:30 10月4日は苫小牧のNPO法人「がるだする」のご一行が雑木林を訪問。地域通貨やミ ニコミ誌など、楽しく幅広いコミュニティ活動を展開しているユニークなグループ。以前 着くなり、一応取材とあいなった。 からの約束が果たせず、ちょうどお誘いのメールを出そうかなと思っていた矢先のリクエ ストだったから、まさに以心伝心というところ。もちろん初めての訪問だから、ログ、雑 木林、フットパスともども新鮮に映った様子だった。「林のにおいが北大演習林と違う」 「焚き火を囲む昼食は予想外の幸せ!」。台風にもまれたあとの疲れと荒みの残る最悪の 林だが、とても喜んでもらえたようだ。 ささみちを歩いてオキ火で焼き物開始!サンマが自己主張している。 グリーンボランティア研修で                   9月30日(木)くもり いつもの場所で。 森と緑の会(国土緑化推進機構)が主催するグリーンボランティア研修の講師を頼まれた のを機会に25名の受講生と共に午後から雑木林にやってきた。午前の講義は3時間、ここ から戻ってからも1時間あまり、その講義の間の現場訪問だからのびのびの雰囲気でもあ るし、熱も入る。全道から集まった皆さんに概略を話してからフットパスを一周。ツタモ リ山林に寄って山の神を参拝、帰途は北大研究林に寄る。地味に手入れをしている動機と 結果をみなさんはどのようにこころでとらえただろうか。そして森づくりの新しいどんな 動機が生まれただろうか。                             演習林で職員の及川さんにばったり会う。で、台風など説明願う。


散策のTPO、散策のためのファッション           9月26日 晴れ 24℃ 着いてすぐ、タウンシューズをはいたまま、林道を北上して歩く。いつもなら長靴に履き 替え、服も作業用に着替えて大きな鎌やのこををもつところだが、今回はそれをやめた。 今日はこの靴で。林道は変化に富む。 なんとなく、あの三つ道具を持っていると内省的な散策にならないと思うから。やはりそ うだった。林道を踏みしめる自分の足音と地面に落としたわずかな視野、そして自分のメ モリー(つまり心)。これだけで散歩は形作られる。三つ道具を持った場合は、落ち枝が あればひょいと拾い、キノコがあれば道草し、道にもたれかかった草は鎌で払いのけ、と 寄り道ばっかりしながらの仕事モード。双眼鏡を持てば探鳥モードとなる。自分の心と語 るカウンセリングや、純粋に楽しむ散策を求めるなら、何も持たない、ファッションも普 通のいでたちで。これである。散策のTPOはこれからよく考えるべし、ということにな る。  で、こうすると、自己内観に集中できる。緑のトンネルの中を通りながら、手を後ろに 結んで林からわたってくる気をリラックスした体全体でシャワーのように受ける。そのこ とに集中する。新しい感覚の林の散策は、「ひとりで」「自分のお気に入りの林で」「「 普段着で」(3デ・ハイクと呼ぼうか)やることで見えてくる。  ここのフットパスについて歩きながら考えた。やはり、メインはこの林道にするべし。 風景の変わり方が絶妙だし、平木沼往復も単調でない。むしろ同じ道には安心があるから だ。少し慣れたら、田園コースへ、または送電線コース、そしてまほろばへの立ち寄り、 あるいはささみちへの逆コースなど、幹線から枝道フットパスへという順位を想定すると いいみたいだ。 まほろばを高みから見下ろす。右は皆伐跡地。むんむんの勢いあり。  そのまほろばに顔を出してみた。風倒はカラマツ数本。やはり林に囲まれた低みは大き な揺れがなかったようだ。だが、ツタモリ山林やよその林をみて歩くと、今回の台風でも 針葉樹人工林の風倒被害が圧倒的に多い。面積でも決して多くない広葉樹の雑木林は、時 折、大木の風倒にお目にかかるものの、割合からみるとはるかに少ない。送電線下地の皆 伐あとなど若い樹木に更新した場所を見るにつけ、「植えない緑化」にスポットライトを 当てるべきだ。 クリタケが出てきた。10分ほど、晩のなべの具に頂く。  ボリボリは溶けかかっておりピークを過ぎたようだ。そのかわりクリタケとナメコが出 てきた。厚真の斉藤さんが来たので、その辺歩いてみる。10月からの間伐の打ち合わせも しておく。本格的には10月20日から、その前は風倒の片付けをしておこうとあいなった。 このあと、林道沿いのカラマツの風倒を3本整理したが,暑さの不快感にとても閉口した。 なにせ24℃だ。まだまだ伐採の重労働は敵期でない。 また白いキノコが出てきた。ナイフでそいで防腐剤を塗った。 しかし皮がベコッと剥がれた。重症だ。


台風18号の被害                 9月18日(土)曇り22度c 9月8日にやってきた台風18号の現場の被害を、実はまだ点検していなかった。いち早 く北大のキャンパスなどは職場のそばだからあらかた見ることができたのに、土日に根室 のフットパスを視察したので肝心のこの雑木林は回ることができなかったのだ。 左は試験地。右は普通のトドマツ造林地。片付けは気が遠くなる。 ツタモリの林道は気持ちがいい。  で、18日、被害が比較的大きいというツタモリ山林をまず回ってみた。3kmの林道 はわたしがデザインしたサインがまだ要所要所にそのままおかれて、立派なフットパスに なって健在なのはうれしかった。また、林道沿いの風倒木がすでにすべて道の脇に片付け られ、通行に全く支障がないようにされているのはさすが対応が早いと思った。まずこれ が一番大きな印象だった。細部では、試験林やカラマツなどの若い造林地が根返りや幹折 れが目だった。まとまった風倒地はいずれ時間をかけて整理することになる。もし、一緒 に雨がふっていたら、56年の台風のように被害はもっとひどかっただろう。不幸中の幸 いと言っていい。56年に比べれば10分の1程度だ。あの時は100haが倒された。  今年から、「気持ちのいい木探し」をしている。ツタモリのフットパスを一巡した終点 を山ノ神の鳥居にしたので、そこにある直径80cmのヤチダモに手をかざしてみた。ほ んわかと気を感じる。堂々として樹形もすっきりした素性のいいヤチダモだ。15mはな れた同じ太さのカラマツも、脇に立ちやすく、かつやわらかい気を出している。各々に背 中をもたれさせて深呼吸を繰り返す。これできょうは随分元気をもらえただろう。わたし の身近なところでは、この大木たちがもっとも「気持ちのいい木」である。 わたしが好きなヤチダモの大木。  ログハウスのあるこっちの雑木林の被害は、幸い、軽かった。フットパスを一巡してみ ると、相当な量の落ち枝が道を埋めており、鎌で跳ね除けながら進んだ。倒木は懸かり木 になっている物と、完全にとおせんぼしたのがあったが、合計すると10本、チェンソー で玉切りするだけですんだ。道端に積んだので、秋、薪に使おう。また、先週間伐の届出 をした今シーズンの手入れの時に、この風倒も一緒に片付けよう。今はまだあの重労働に は暑すぎる。 タヌキのタメグソ。前回の上に乗っかっている。  一周するときにまだボリボリ(ナラタケ)は採れるだろうと、大げさにもかごを持参し たが、小径ではもう姿が見えなかった。ところがログの前にあるウェルカムサインがのっ かった腐れたほだ木に、若々しいボリボリがびっしり着いているのを発見。近寄ると、蚊 の群れが飛び立つ。そうそう、思い出した。木に出るボリボリはいつもこんな風に蚊の巣 だった。このキノコ採取とチェンソーの玉切りで、顔と首は随分蚊に食われた。無欲の勝 利だね、とか独り言を言いつつ収穫。 カラマツのフットパスはこの程度の風倒。ボリボリのデパートだったwelcome sign 。巡回の3道具に、クマスプレーも。 やったね!ボリボリ大発生               9月4日(土) 晴れ 外25℃ ベランダに葉っぱ 台風16号が今週苫小牧に上陸したので、林道の落ち枝などを片付けるため、のこ、な た、大鎌を担いで林度を点検する。思ったほど落ち枝は多くなく、のこぎりを使ったの は数回だけ。ただ、イヌコリヤナギとヤマハギが林道に覆いかぶさってきたから、ササ やその他の高茎草本とともに鎌などで払って片付けた。 初物ボリボリとどんぐり  カラマツのフットパスに入ってみると道の真ん中で一本のきれいなボリボリ(ナラタ ケ)を見つけた。もう出てるのかなと付近を歩いてみると、あるわあるわ。出たばかり のかわいい、虫にあまり食べられていないボリボリが結構出ている。頭にかぶっていた 日本手ぬぐいをとってそれに取った。家内と二人の夕食2回分をまず確保。まほろばの 交差点でも、今度はもっとたくさん出ている。イタヤカエデとキハダの根元に多い。小 屋の手前で、カラマツの根株からゾクッとでているのも発見。これはフットパスの真ん 中だった。 カラマツ根株から出たボリボリ フットパスはわざわざ作った新しい道だけど、静かな林道がやはり歩きやすいし考え 事をしやすい。フットパスは、頭を空にしてむしろ感じるところだ。その点林道は孤独 を楽しみつつ、思索をする、あるいは懸案や悩みを解きほぐし解決するところ。そして 踏ん切りをつける場所。何を思索するわけではなかったが、散策らしく歩きたくなり、 作業服を平服に着替え、まほろばを往復した。 収穫・恵み=土地からの気功

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