自然体でいこう!!


NO.35

2006/01/07〜
2006年が明けて、どこか入れ物の違う感覚を味わう日本人だが、 なんとなく、自分に都合のいいパラダイムに移るような希望を、新年というのは 秘めているように思う。だから、いつも「希望」なのだ。 で、現場は、そんな希望を笑うように何も変わらないで、ある。 しかし、太陽、空、樹木たち、訪れる生き物達すべてに、 希望といえば希望を汲み取ろうとして出来ないことはない。 例えばお日様。今日も生きています、ありがとうございます と手を合わせれば、希望のひとつも湧くようにできている。 自然とはなにか、を考える時に、まず自らの「自然体」を感じ取る必要性、 わたしはそこにこだわりたい。
讃えよ、春の日差し、春のきざし   2月25日(土)快晴6℃

快晴の春の日差し。林道の雪も一部では消え始めて、何より日差しの暖かさが振るの訪れ
を感じさせる。かた雪なので移動が抜群に楽になったが、切り株の高さはすこし高くなる。
それでも、傾いた枯れ木、若い萌芽などをまずすばしこく整理してみると、絵になるよう
な手自然の世界が広がって見えてきた。

直径が10cm以上もあるツルに絡められたカラマツを前にした。このツル、ブドウの
ようなものとツルアジサイのようなものとが、まさに長い付き合いのようにそれぞれ堂々
としているが、絡めとられたカラマツは頂の成長がとめられたためにずんぐりになり、わ
たしにはやはり苦しそうに見え、ここで開放してあげたいと思う。ややこうして逡巡のあ
と、ツルと枯れ枝を切った。

このごろ、植物を切るということにどこか申し訳なさを感じつつも植物たちが持っている
転生の生命力を思い起こし、感傷的にはなることがあまりない。今シーズンはじめにてが
けた広葉樹の造林地のように植えたすべてが絡めとられてしまうほど、人工林には繁茂を
うながすような隙間がある。萌芽再生林ではそのような侵入を感じないで来たのはなぜな
のだろう。

それにしてもいい天気だ。仕事をするのも楽しいし、チェンソーをおいて周囲を眺めわた
すだけで幸せになる。1時ころ、燃料が切れたので昼食に戻ってから、歩くスキーで林を
回ってみる。せっかくの春の日差しだもの、体全体であちこちから感じたい。

2時過ぎ、再びチェンソーをもってはやしに戻ると、すでに雪は腐ってずぶずぶぬかり始
めた。難儀しながらも、終わるころには雪原に散乱した枝条が、この時期の手入れの進み
具合をよく表していた。
 雪が多いとウサギの餌は格段に減るのか。
  雪面から出ている枝がウサギに食われる

春の兆しが感じられるだろうか?

林道で土が出始めた

伐倒した間伐木。枯れ木も多い
林を縫って風土と一体になる 2月18日(土) くもり 1℃

今日も北大の研究林で手乗り野鳥の訓練をしてから苫東に出向く。小屋のベランダで耳を
澄ますと、カラ類の小さくにぎやかな声がする。ずいぶんとか細いが、あれは春に近いこ
とを示す声だ。声だけでなくシルエットとして見晴るかすと、おお、随分要るではないか。
樹木の梢に小さく小走りする小鳥達がいて、躍動的だ。冬場、あまり見なかったゴジュウ
カラやコゲラなどもせっせと採餌している。

林は堅雪だったけれどもチェンソーをもって枯れ木だけでもと林に入った。そのとたん、
ス、ス、ズボ、ス、ズボ、ズボ、ズボーー‥。これでまた作業をあきらめた。久々にチェ
ンソーのエンジン音を響かせた後だったのでがっくり。気分を変え、小屋でツアーのファ
ッションに変身して、小屋の真東にある朝日沼へ山スキーのツアーに出た。昼前だった。

別に朝日沼へのコースがあるわけでなく、小屋から東へ500mほどいけば厚真の農家や
朝日沼にでるのだ。この辺の土地勘があるから、と軽く考え出発したが、どうも南東へず
れたようだ。地元でもあまり知られていない黒井沼にでた。さらに朝日沼の縁をくぐり田
園地帯を望んでから折り返した。途中、ツルに取られた造林地、萌芽を繰り返している若
い雑木林などをていねいにくぐっった。灌漑用だという排水路沿いにおびただしいエゾシ
カの足跡がある。尾根に上ってすぐ、若いエゾシカ2頭が移動するのが見えた。雪が深い
から、お腹をするようなつらい移動だと思う。

思えば、企業が所有しているために、入林が少なくましてやこんな何でもない若い、少し
荒れた林に来る人はいない。35年ほど前の用地取得からこのかたほとんど動物達しかや
ってこない大地。この一帯にはだからこの年月の履歴のようなものが刻印されているよう
に感じる。

カラマツの松かさがあちこちに
大量に落ちていた

ウサギの足跡を追ったらこの穴に
たどり着いた。寝床だ

林の東はずれに現れた民家
春の日差しがやってきた   2月11日(土) 快晴 プラス5℃

連日の雪が一服。快晴の朝、やや遅くまで寝て、まず北大研究林でヤマガラを手に乗せる
試みに出かけてみる。先週、乗りそうだったので欲を出してみたのだが、今日はヤマガラ
がほとんど居ない。餌場に数羽いただけだ。では先週のあの群れは何だったのか。明日、
もっと早い時間に行ってみよう。

苫東の雑木林は、なんと、林道の除雪が入っている。今季3回目になる。今日はツボ足で
小屋まで歩く覚悟だったから非常にありがたい。積雪は60cmほどある。もう、伐採の
ためにはスコップが必要なほどだから、実際、間伐の作業は見送らざるを得ない。

外の気温はプラスの5℃。冬から春に折り返した感が強い。ベランダで日向ぼっこしても
寒くないほど。そうしてしばし直射日光の陽だまりに遊ぶ。ストーブに薪をくべてから、
山スキーを履いてフットパスを巡る。ゆっくり歩いて50分。スキーはほとんど潜らない
ようになった。後半、シールに雪がべたつくようになった。やはり、春の雪である。

どんどん雪が積もった雑木林。林床の有象無象を、雪は日に日に隠して、雑木林はお色直
しを始める。「雑」という漢字はいろいろな、という意味を持っているが、冬の雑木林は
雪によって、白と、直立する裸木だけの、実にシンプルな風景になるのだ。だから何なの
だ、という人もいるかもしれない。でも目を凝らして耳をすませばわかる。ここには音楽
がある。森羅万象からのメッセージが聞こえる。ビバルディの「四季」の「冬」は、そん
な光景をうまくイメージ化していると思う。まさにあれだ。カチンといてついた「冬」か
ら再び水緩む小川の「春」へとまたつながっていく。
ps; 2月12日、ヤマガラはわたしの手に何回も乗りました。
    ホーミーで警戒心をとり好奇心を呼び起こす遊びはかねてよりやっていましたが、
    手乗りは諦めていました。一応、コレが達成できたことになります。
    自然体としてはいかがなものなのか、そこに関心があります。

研究林の大ミズナラ。神社の下にある

小屋から山スキーを履いて出かける

フットパスの上をキツネが歩く
冬の森を散歩する  2月5日(日)快晴 マイナス13℃

昨日の土曜日は夜中から午前中一杯で30cm以上の雪が降った。先週折角除雪してもら
った林道は、おかげで無惨にも塞がれて再起不能状態。それでは、と気分を持ち直してマ
チへ戻り演習林に寄る。

入り口近くの池の駐車場に車を置いて林道を歩く。広葉樹の斜めの太い枝々にこんもり雪
が載ってやわらかい、なごみの風景である。それが青空にはえるから、木々の表情が見え
こちらの気持ちはキリリと引き締まる思い。緑の葉を持たない冬の広葉樹林は、夏場より
「緑的」だという理由はその辺にある。

沿道の積雪はほぼ1mで、きれいに除雪してある。そんな堂々とした林道をは中高年の方
々が散歩にきており、年配の女性と軽く会釈し挨拶を交わす。ノルディックのストックが
標準装備になりつつある。冬の森の散歩はかなりお洒落でぜいたくな趣味に見える。ドイ
ツの森林保養地で味わった雰囲気がそっくりここにもある。半分凍った池にはマガモたち
がいて、賑やかさを覚える。

見覚えのある赤い車が止まって窓があいた。研究林の日浦林長だ。晴れ上がった日曜の朝、
家族でおでかけだ。林長ファミリーは林を出て、日常は林と離れているわたしなど市民は
林へとやってくる。冬の林の風景は見飽きない。そして呼吸が深くなるのがわかる。風土
に包まれる喜びを感じる。

樹木園のキャラボクのあたりで数十羽のヤマガラと、シジュウウカラ、ハシブトガラと出
会う。ヤマガラの大群ともいえるが、いつものように2,3mの至近距離に来る。じっと
していれば手やアタマに乗りそうな状態だ。時折、当方の顔に向かって飛んでくるヤマガ
ラもいるが、威嚇しているのか、近眼のためのニアミスか、アタマに載ろうとして邪気を
感じたか。本当にこちらに飛んでくるので心の中ではひるむ気持ちとアタマに載って欲し
い気持ちが錯綜した。

この周りに女性フォトグラファーが数人

冬の森の散歩は無性に楽しく明るい

森とみち。自然美の永遠のテーマ
冬はいよいよ折り返すのか!           曇り 昼の外気+5℃ 

嬉しいことはあるものだ。お願いしたわけではないのに、小屋までの林道がきれいに除雪
されていた。うれしい。深謝。合掌。す〜いすいというアクセスの嬉しさは、当事者でな
いとわからないかも知れないが、ともかく、ここにもサポーターがいらっしゃるという心
強さが生まれて、ジーンとくる。

土曜日は地元のNPOの総会のセミナーに呼ばれてこの森づくりとその結果得た林の恵み
の話を、約40人のお客さん前で、した。これから、水源である河川の上流で木を植えよ
うとする会員の前で、「植えない森づくり」や植えることより手入れの意味を重視するな
どをあわせて語ったから、、きっとミスマッチがあったと思う。挙句に「林とこころ」の
案件で締めくくった。これは、きっとますますのミスであろうな、と話す本人は感じる。
アウトプットする方はこれが残る。

でも、その乖離が大きかったら、そのほうがうれしい。セラピーを中心にした後段をどう
受け止められたかのニュアンスは聞きそびれたけれど、一般参加された市民の方の目がず
っとこっちを見ていてくれたことは手ごたえである。どの方が眠って、どの方が関心をも
ってくれているのか、それは話し手からは一目瞭然。わたしと林はともに試されている?!

今日も作業は諦めた。山スキーを持ってきたので少し歩くことにした。クロカンの板は、底
面積が小さいから残念ながら雪によく潜るのである。歩く林巡りは馬鹿にできない。自分
のフィールドが、植物以外の生き物、特に大小の哺乳動物ということになるが、それらとど
う一緒にいるかというのが雪面に残されたサインで一目瞭然になるからだ。

歩き出して間もなくエゾリスが顔を出した。冬のリスは、一体、いつも陸と空とどちらを
好むのか、疑問を持つくらい地面を歩いている。リスという生き物は基本の採餌活動は地
上なのではないか。というのは、そのおびただしい足跡と飛び歩くスピードの比較による。
飛び歩く姿を見ているとモモンガのように動くが、込み入った枝は彼らにとって移動のた
めのネットに見えているようだ。

しかしエゾリスは敵がいなければベースは地上かどうか考えたことはなかった。少なくと
も着葉期は枝のネットは見えにくいだろう。英国では地上型と樹上がたのリスの闘いで樹
上型が優勢を占めつつあると報告されている。

カラ達がやってきてわたしを冷やかすので、ホーミーでつきあう。シマエナガを中心とし
たいつもの群れだけど、こんなに多くがやってきたのは春の知らせではないかと思う。

ラッセルして歩いていると、ミズキのような群落に出会った。シカが細い幹の一部を食べ
ているからマユミかなと思ったがそうではない。やはりミズキ的でしかしながら枝が赤く
ない。これは何か。葉が出たら確認に来よう。

除雪された冬道。ラッキー!!


枯れかけたカラマツはツルが
大繁茂。そこへよってきたシカや
ウサギは結局食べ物に恵まれて
おらず、こんな所にくる。


老いて大好きな木の
ひとつ。
コラム:「つる植物は敵なのか、どうか」について

林の手入れでは往々にしてブドウやコクワやガクアジサイ、チョウセンゴミシなどのツル
ものを伐りその繁茂を抑える。造林地などは手入れを怠ると、ツルの魔の手に負けて原野
に戻る。しかし、次のような声もある。

A「ツルが悪者のような意見だが、コクワやブドウのツル植物こそ、多様な動物にとって
  大切ではないか。一概に伐る、という考えはいかがなものか」
B「ツルにも共生がありうるのではないか」

これらの質問にわたしは森づくりの担い手の方針次第だと申し上げる。造林した物の収穫
を目指す場合はそれを根絶やしにするツルの力は排除したい。美しい林を創りつつ多様で
健全な林を目指す場合も、ツルは排除する。

なぜか。
@ツルたちのインベーダー的な生命力は通常の植生の力を超える=実際に気を植えて植え
 た木々がどんどんツルに絡め殺されていく様子をみれば理解できると思う
Aツルに絡まれた林は泣いている、ようにわたしには見える。生命力としては単木でたつ
 樹木の方が弱いと思う。だから目的にあわせ加担する。しかし、勝負がみえて、大好きな
 コナラやブドウ棚ができあがったところでは、林業的見方は緩めて共存させる。
Bなどなど(やめます)

みなさんはどう思われますか?
マイナス4℃の外気でマイナス10℃の部屋を暖める  
                                         1月21日(土) 晴れ −4℃

今週も雪が降った。林道はまたもや塞がれ、車体は雪を擦って現場に着いた。積雪は50
cmほどだから、足の短いわたしには作業はほぼ限界だ。くやしい〜!!

長老は10日ほど前から腰痛で養生している。先週会った時は、「もう来年は山仕事は無
理かなあ」、などと弱気を吐いていた。考えてみると、70歳を過ぎて冬の山仕事は大変。
まして長老のようにやり始めたらがむしゃらに片付けないと気がすまない性格なら、尚更
自分を痛める。「そうだね、でも…」とかなんとか、わたしも返す言葉が難しく歯切れが
すこぶる悪い。

小屋の中はマイナス10℃だった。外気はマイナス4℃だから、薪を取るために窓から体
を乗り出すと、外の方が暖かく感じる。それではというので、ふたつの窓と入り口を開け
て、外の比較的な暖気を小屋に招きいれた。10分足らずで小屋の温度計はプラス20℃
になったが、これは薪ストーブからの輻射熱のせいかもしれない。

こうも寒いと着替えて外へ飛び出すのに勇気が要るが、いったん動き始めたらもう寒さを
感じない。今日は昼も食べないで通しで仕事しようと決めてきた。なんか、おにぎりなど
を食べたあとに著しく集中力が落ちるし、食べないで居た方が修行的でストイックであり、
そんな状態の方が好ましく思えるのだ。いやいや、実のところ真相は年末年始の食べすぎ
で体重が1kg多いままなのだ。

間伐した中にニセアカシヤが数本あった。軽くて枯れ木のようでも材は腐ってはいない。
柱などに使う理由はそこに原因があるのか。そういえば小屋のベランダの柱用に長老が選
んだのもこのニセアカシヤだった。近くには直径が30cmほどの堂々としたコブシがあ
った。おもわず、撫でさすり腕で抱え込んで愛でた。出会いの祝福である。

2時前、冷たい風が吹き出した。人の来ない真冬の、まったく独りだけの作業は透徹した
自律的な時間に思え、わたしにはそれなりに好きだ。自然はこういうシチュエーションで
ないと見せない素顔があるのだ、と思う。また、恐らくこの時間、わたしは精神がかなり
リラックスしているのではないかと思う。

ツイン・コブシ。木々の枝の隙間
を縫って入り込んでいる。謙虚、
折り合い。


小屋ではよくインドのお香をたく。
煙が滞留してうっとりする。
作業断念し、スキーをはく             1月14日(土)曇りのち晴れ 1℃

週の後半、苫小牧でも大雪が降ったので、案の定、幹線道路が除雪されて林道の入り口は
封鎖されていた。やれやれ。トランクからスコップを出して車幅分の除雪だ。          

林道もあいかわらず車の腹を擦る深い新雪で、時速20kmで走ると舞い上がる雪でフロ
ントグラスがホワイトアウト状態だった。作業する場を見やると先週積んだ間伐木は何も
見えないほど雪は積もっている。「今日は、やめよう」。

小屋で、チェンソーの分解掃除を久々にした。おがくず状態のものがオイルとからんでこ
びりついているのを、金具でそぎ落とし拭いた。久々のリフレッシュである。燃料とオイ
ルの携帯用タンクにおのおの満タンにして目たてをして完了。

今日はクロカンのスキーを履いて林を巡ろう。50cm以上はあるため、林床が大分きれ
いになってきたから、歩く気になるほど雪原は美しい。まほろばから逆コースをたどった。
まほろばのカラマツ林は相変わらず静かな別世界だった。尾根に上がってからは、手入れ
の行き届かないヤブ山状態だ。枯れては芽生える循環が続いているのだから、そこに美醜
をはさむこともないのだが、せめて道幅があると大分違うかもしれないと今は思う。しか
し、新緑の頃、見てみるとよい。道がないほうが美しい。緑に染まりながら林を縫うため
には、ここのように道のないワイルドな「歩きやすいヤブ」を進む方がこころに響く。こ
れはこの春、誰かに伝えたい。4月と5月、間伐の合間に春祭りをしよう。


小屋からすぐ歩き始めたシュプール。
林床が消えてしまうと、木々たちだけ
がクローズアップされる。
出会ったのは、カケス、アカゲラのみ。
シカとウサギの足跡は無数。シカは、
フットパスも借用して歩いていた。



*春祭り、冬祭りなど、全国的に季節の切れ目は
 春分、冬至などで表現されるけど、北国の
 ダイナミックな季節変化、春への憧れなどは
 もっと祝った方が楽しい。

 だからここでは、冬祭り、春祭りなどを焚き火を囲んで
 やる。しめやかに、ひめやかに。
 



小屋のベランダに作業の必需品を
並べてから年初めの掃除、チェック


まほろばのカラマツの倒木。
片付ける日は来るのか?

  











あのサインがこんなに埋まっている。
やっと掘り出したところ!
仕事始めにエゾリスとアカゲラなど来訪      1月7日(土) 快晴のち雪

今年初めての山仕事に行く。年末除雪された林道は、その後の降雪で車のおなかを擦る状
態だがほぼ安全に小屋に着くことができる。小屋へ左折したとたん、数10m先の雪面を
黒い動物が走るのが見えた。エゾリスである。久々のような気がする。エゾリスは、ベラ
ンダの前あたりから右へ左へと移動して最後はナラの木に登った。みると、小屋の回りは
ウサギの足跡で一杯だ。エゾユキウサギは里の動物だとすれば、ここはまさに里山に近づ
いているということになろうか。

着いてまず、ベランダの前で、小屋を取り囲む四方の木々に合掌する。小屋もすごい存在
感だ。いつもの段取りをして100m離れた現場へ行って、ここでも仕事始めのお参りを
まず、梢からのぞく太陽に向かって、そして囲む樹木たちにする。手を合わせるだけで、
自分が下座になるから不思議だ。

雪は依然として40cmもあるから、移動するのも苦労だし、チェンソーを使う際には、
いちいち雪をかいて根元を出さなければならない。雪の少ない苫小牧ですらこんな按配だ
から、一般の道内は冬仕事は大変なことになる。とてつもない徒労をしている感覚もした
ものだが、ひとつずつ、細い丸太の小山が出来上がってそれらが気持ちのよい新緑や紅葉
をもたらすことを実感としてわかるようになるから、このごろは徒労感はなくなった。こ
つこつと愚直に日々の作業を積み重ねるだけである。

遅い昼食に戻るとき、小屋の前でシカが雪を掘ってササを食べたあとを見つけた。硬い雪
を掘って地面を出すのは今、蹄をもった動物の特典だ。ベランダにたつと、林道の上空に
トビより少し小さめのタカが飛んだ。オオタカだろうか。おにぎりを頬張っていると、ア
カゲラが積んだ薪をつつきだした。いやはや、動物王国になってきた。一帯は生き物達と
シェアしている、その感覚が心地よい。

午後2時半ころから、突如激しく雪が降り出した。後で聞いたニュースでは、わたしがの
んびり間伐をし昼食をしていたころ、札幌あたりは豪雪で、高速道路はかなりの区間で不
通になっていたようだ。3時、激しく降る雪に音をあげ、初仕事を終えた。疲れが教える
充実感、それが幸福感に替わる。

年末、POMSという気分を評価するアンケート結果をまとめてホームページにアップし
た。レポートはこの雑木林においでになった13人が、訪問する30分前とフットパスを
歩いた後の気分変化を65項目のアンケートで答えてもらったのを集計したもの。ついで
にわたしもモニターになったのだが、13名は良い方への変化が見て取れる反面、わたし
には林の散策がほとんど効かなかった。精神科医の瀧澤先生は、これはわたしがすでにス
トレスマネージメントを体得して実践しているからだ、とおっしゃる。「林とこころ」の
次のステージが見えているように思う。

現場では誰も写真を撮ってくれない
から、こうしてたまに記録する。


三叉のクラフト。意味は特にない。
ただ削るだけ。これ、オススメ。


突然、雪煙る雑木林。墨絵のような
世界。





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