植物の勢いを感じる

NO.32

2005/07/02〜


「雑草」、とひとからげしてはいけないが、様々な、という
意味で使う雑草の勢いが、今年はいつもと違うように感じる。
なにか、テンポが早く、勢いがある。だから毎週、伸びた分を
刈り込まねばと思わせる、そんな生命力。
これでいよいよ、手自然。いよいよ、里山!!

戦いと言ってしまえば言いすぎだけど、その緊張。
自然界のエネルギーとのせめぎあいと妥協。
まあ、これが植生を管理する世界だと思う。ちょっと傲慢な表現だけども‥‥。

さあ、この夏は、どんな発見があるだろうか。




黒松内のフットパス               8月27,28日 晴れ時々曇り

後志・黒松内町で行なわれた「全道フットパスの集い」にやや遅れて参加。午後3時半に
始まったプログラムの各地のフットパス紹介の最後に、主催者の小川巌さんは、やや毛色
の変わった、わが「雑木林のフットパス」を紹介せよとわたしに振ったので、5,6分、画
像なしで林のフットパスをお話した。本来なら、紹介した手前、是非おいで下さいという
べきところだが、雑木林のフットパスは、独りで静かに歩くべし、という観点から「いら
っしゃい」のサインを出していない、ということを半分笑いながら述べた。言葉を引き取
った小川さんは「このフットパスは、来るな、と紹介する変わったフットパスだ」とやは
り笑いながら締めくくった。  

黒松内は日本におけるブナ自生の北限である。自然の家など、エコツーリズムの拠点とな
る施設や団体がいる。黒松内は島牧の海のアメマス釣りの折によく通過したが、機会があ
れば街中を流れる朱太川を釣ってみたいと思っていたので、二日酔いの朝、ストレッチの
勤めを終えたやや朦朧とした状態で行って見た。                  

水量のある川に下りて餌釣りのおじさんが一人。そばで拝見すると70歳代中ごろ。   
「毎日、来られるんですか?」
「いやあ、週に1回ぐらいかな」
「餌は?」
「イタドリ虫」
「なるほど」
おじさんは瀬でこのイタドリ虫を引っ張るようにしてヤマメを誘い出していた。    
わたしはここではじめてのキャストをしてみる。と、ファーストキャストにトライしてき
た。フックオンはしなかったが、何投目かに12cmほどのヤマメがヒットした。フット
パスに出かける前の30分ほどをここで遊び帰るとき、フライをしている中学生に話しかけ
る。
「今そこでね、20cmがあがった」
「おお、それはすごい」
町の真ん中、餌釣りも多い中で20cmのヤマメはすごい。川べりもなんか、英国風。

フットパスを8km歩く。森林のにおいよりもはるかに畑風景。農道を歩いた最後にとわ
ベールのレストランでビールとソーセージなで手作り商品を賞味。













自然の家を出発


農道を歩く


3時間後、パブのようなレストランへ


帰途、懐かしい真狩の樹木園の
カツラ並木を愛でる



緑に染まりそうなみち。草いきれで
むんむんする。

遅い昼食はおにぎり2個となすの
新漬け。本の上にラジオを載せ、
試合の行方に耳を澄ます。
小屋で駒大の決勝戦を聞く            8月20日(土)曇り 26℃ 

先週、道にかぶさったササ刈りをして以来、腰の調子が悪い。仕事でイスに座っていても
痛い。完治しないまま、今日はブッシュカッターを持って、小屋へのアプローチを刈った
。奥のささみちは鎌で手入れ。その足でササみちのすべてを一周してみると、モハーとい
う林の気が伝わってくる。静かで湿度に満ちている。風なし。            
                
 汗だくになった服を2度着替えて、ベランダで遅い昼食をとる。ちょうど、駒沢苫小牧
の決勝戦であり、いささか気が気でない自分に気づく。郷土愛、みたいなものか。雑木林
の汗だく仕事を終えてか細い音の高校野球中継を聞く昼下がり。その構図が、どこか遠い
なつかしい出来事のように見える。                        

 なんとなく気が下がっているような感じがする。淡々といこうと、広場で木々に向かっ
て手を合わせる。祈るということを知ってから、これは妙薬だとつくづく思う。自分を越
えた場のながれがあり、このながれに身を任せる。                 

 里山的手自然を作るためには、遊びに出たり社交界めいたところ(ただの飲み会などだ
が)にあまり食指を動かしてはだめだなあ、と戒める。それでは現場がおろそかになる。
また、人と会うよりは現場に居ることが好きなわたしは、何より、林にこもっていたい。
ただ引きこもっていたい。居心地のいい場所にじっとしていたいというのは、いわば、甘
えであり反動であると断じることもできるのだが、引きこもらないと見えない世界と言う
のも存在する。そうしないと見えないものにわたしはもっと出会いたい。そこから時折飛
び出しては戻る日々と週の繰り返しで日常は形作られる。              


林を求める声に考えた     8月12日(金)くもり 26℃

夜遅く、遠方でうつに悩む方からメールが届いていた。このHPなどでみた北海道の林の
風景をとても気に入ってる様子で、益々混乱し深刻な日常の中で、あのような(=このよ
うな)美しく思う林の風景に出会うと何とかなるのではないか、と思わせたようだ。有り
難いと同時にちょっと重たい責任を感じる。                                        

早朝、まてまて、と思いレスを書き始めたが、やめた。そう思うならそうであってもいい
のではないか。所詮、林もその方の鏡である。最も映りやすい、映しやすいところと思え
る場は、何か意味があるのかもしれない、と思い直したからだ。しかし、レスはさておけ
ないものだったので“you are ok”という意味をこめて簡単なメッセージを送った。  

「うつになりそうな時なんかには是非来てね」。これは林を手入れし始めた時からずっと
言ってきたメッセージ。手入れされた里山風景や歩きたくなるフットパスの風景を発信す
ることは潜在的に少しは意味があると知り胸がふくらんだ。林自身は、実は樹木自らの力
でどんどんと空間を取り合い勝手に美しくなっていくのだ。ほんのちょっとした手加減で
林は自分で雰囲気をかもし出していく。今度は自分も耕し、自分も林になれ、ということ
だろうか。ああ、それも大事な修行だ。もしそうなら逃げないで行こう。       

蚊を気にしながらテラスでヨガ・アーサナから冥想へ。目を開いているとき何度か蚊を払
ったが最後に蚊をつぶしてしまった。後悔してその後はままにして小一時間を過ごした。
ササのフットパスに随分ササが被り始めた。大鎌をもって出陣。手入れはやっぱり手鎌。
かなりデリケートな作業をこなすことが出来るからだ。オレンジのツナギの中は汗びっし
ょり。首に巻いた日本手ぬぐいで顔を拭き吹き1時間で小屋に着いたが、手ぬぐいはびっ
しょりだった。                                 

4日に、かつてこの雑木林の常連だった元北大の好田さん(女性・宮崎在住)がやってきたよ
うだ。1週間の間に九州から2人の来客があったことになる。以下好田さんのメッセージ。

『元北大雑木林チームの伊庭(好田)です。宮崎の暑さにダウンし涼みに帰ってきました。
北海道の林は、すずやかでほっとします。本当に久しぶりの雑木林ですが、なじみの場所
に帰ってきたという気持ちがします。ここでの活動から離れて久しいわたしですが、気軽
に立ち寄れる大好きな林があると言うことは、とても幸せなことだと思います。気持ちよ
い林を守り続けてくれている草苅さんにあらためて感謝しています。これから、フットパ
スを歩いてみようと思います!』                           

被ったササを払うと圧迫感が取れる



燃えるように緑の枝、空に伸びる














初日、林を歩く

翌朝、樹林気功

矢文千古の森のツリークライム

アカエゾマツの写真を撮る降矢先生
下川の森林養生プログラムへ        8月6〜7日 晴れ時々曇り、にわか雨つき

わたしの場合、美しい快適な林をつくることが大きな目標であり、唯一、その辺に深く関
わろうとしている。個人と樹木の間にも何か深い関係が潜んでいるようだから、わたしは
作業を続けながらその辺の気づきも記録しておきたい。また、ある程度こぎれいで気持ち
のよい美しい雑木林であり続けるためには、絶え間ない、ほどほどの手入れが必要で、そ
の結果として里山的な「あずましい」環境が出来る。これは土地の氏神様もすこし喜んで
くれそうな気がする。                              

その点、道北の下川町は人工林を主とした林と一部の広葉樹大木群をうまく活用して、森
林型の保養地に向かっている。その地歩は行政と町民とで着々と固められて、昨今、森林
セラピーを取り込み始めた。8月6日からは森林養生プログラムが行なわれ、わたしは6
日の午後から7日の夕方までプログラムの半分だけ参加した。心療内科の降矢先生の講義
、森林散策前後の看護士によるいくつかの測定、そしてもちろん森林の散策、樹林気功な
どが組み合わさり、温泉とやや養生的な配慮のある食事がセットされていた。     

いつもの習慣で、わたしにとっては北海道の森林がなかなか保養地的に捉えられなくて、
どうしてもまず森づくりの視点でみてしまうけれど、頭を切り替えてみると、あの2日間
はまぎれもない保養だったな、と思う。ただ、高速道路を時速120kmで延長200k
mも飛ばしたせいか、血圧が上150、下90だった。こんな数値は初めてだったのです
っかり驚き、散策後も計ってもらうとやはり変わっていなかった。ものすごいハイテンシ
ョンで、その他の項目でも興奮状態であることがわかった。             

「わたしに森林は効かない」。これが結論であれば笑えない話だった。日曜日は大木がた
くさん残った林に出向いて大木と対話。降矢先生とも一緒に散歩しながら写真をとりあっ
た。降矢先生は、拙著「林とこころ」を愛読して下さっており、わたしも先生の「森林療
法ハンドブック」を楽しく読んだ。なにか、古い知己とであったような懐かしい感じの先
生だった。出会いは大事だとしみじみ思う。下川のスタッフは今回もとてもホスピタリテ
ィがあふれ元気。臨森林型の生き様というのを続けて欲しいと思うのだった。     

追記:スタッフの奈須さんの奥さん・千春さんのブラインドウオークにトライし1時間、
   この大木の林を目隠ししたままムカデのようになって歩いた。半ばした頃、トップ
   引っ張っていた千春さんに「どお?」と聞かれた。わたしは難聴気味だがこのとき
   ばかりは聴覚がとても敏感になって鳥の声が耳に刺さるようだった。足の裏もそう。
   かつて米国でははだしで丘に上るsensory awareness というプログラムがあると聞
   いたが、まさにそんな風に感覚をどこかに集中させる。そうすると、こころは自由
   になる。行動的冥想である。                        
 アカエゾマツの直径は1m以上あろうか

九州からまつをさん、来訪          7月30,31日  曇り夜雨、終日もや

畏友「まつをさん」が九州は長崎から雑木林にやってきた。最近急に湧き上がった話だっ
たが、それを大分前に予言された方がいて随分驚いた。長い間関心を持っていただいたこ
とに感謝しつつ、なにか縁があったのだと思うようになった。まつをさんはwebで知り
合うこととなった、いわば里山なかまである。                                   

「おお、素晴らしい!」。やはりまつをさんは偉才、天性の独特の感性を備えている。空
港から雑木林に向かうため裏道に入ると、なんでもない放置された風景をこう評価した。
腕は鳥肌をたてていた。「素晴らしいものに出会うと鳥肌がたつんですよ」。ひと月ほど
前梅田先生が「霧は好きだよ。光線が柔らかくなる」とおっしゃった。そういうファンが
おいでになる。まつをさんは美瑛の田園風景や富良野が演出過多で痛々しく映ったようだ
った。植苗から雑木林まで の道々、畏友は風土の薫りをかいでいたようだ。           

展望台で柏原や苫東の「ニセ・樹海」(一種の錯視だから)を見てもらってから小屋へ。
HPで時折見てもらっている光景だが、切り取りの画像にはこの雰囲気は表現されきって
いない、と笑う。焚き火に日をつけて安着祝いをしてからフットパスを回遊。おもむろに
宴に入った。地産地消をこころがけ、十勝の牛乳とカマンベール、釧路の秋刀魚を別にし
たら、カニ(白老)、ホッキとイカとホタテ(苫小牧)、アスパラ(伊達)、ジンギスカン  
(味付けは厚真)、メロン(穂別)というように、今回はここから数十キロの範囲内で固め
てみた。                                    

早朝、まつをさんはもやのかかる林に散歩に出たようだった。わたしが起きた頃はベラン
ダのイスに座り緑に染まっていた。しっとりした緑。焚き火に手をかざすとまだオキがあ
ったからまきを三つ足してふーっとイキをかけると15秒ほどで炎があがった。焚き火を
囲んで再び歓談は続く。小屋を離れる前に、氏はノートにさらさらと筆ペンでアートを者
にされた。偉才である。感性の高い人に林を感じてもらって感想を聞くのは実にうれしい
ものだ。緑ヶ丘の展望台、演習林、ウトナイを経由して空港に送った。

束の間の末をサンの印象はここに描かれている。是非、クリックを。                

まつをさん、フットパスを歩く

まつをさん、描く

さすがの捨象



千年の森で

わたしはコーヒー、家内はbeer
帯広を歩く                                     7月21日〜24日 くもり

家内とプチ・夏休みで帯広に出かけた。帯広の森のフットパスを歩くこと、お互いの友人
に会うこと、有名な二つの川でフライフィッシングに打ち興じること、北の屋台を味わっ
てみること、北海道ホテルに泊まってみること、などいくつかのテーマを掲げいずれもと
ても満足のいく状態で終えた。

帯広の森のフットパスは意外と短く、一周できたほうがいいと思われた。しかし、ヨーロ
ッパ的な意匠は快適である。間伐の作業路を作りつつ、それをフットパスに利用すること
になるのではないか。
 ヘリコプターの爆音を聞きつつ


周りと一体になる感覚           7月17日(日)曇り時々晴れ 27℃

週末、30年前の数年間、一緒に森林を学んだおじさんたちが定山渓の手前の小金湯温泉に
集った。卒業30年周年の同窓会。偉くなった人、髪の薄くなった人、仕事をやめて修行中
の人、物故者ふたり。もうみんな、それなりの立場であるから、3kの林業まがいのこと
をしている人はさすがにいなかった。                       

でこちらは17日の朝、同級生を空港に送ってこの3kの現場にくる。林の入り口で林道を
歩くヤマシギを見つけた。林は夏モード、一段と暗くなった。と、駐車場に車が3台、小
屋のベランダではなにやら昼食会の模様。Tさんたちである。苫東ツアーをしており、そ
の途中に昼食に立ち寄ったとのこと。初めてのIさんとちょっとフットパスを歩き写真の
モデルになってもらう。                             

誰も居なくなってから薄暗い小屋に横になると、疲れが出てきてそのまま30分。外気は25
℃を越えているが中はひんやり、しずかである。‥充電。テラスにマットを敷いて座る。
そよ風、セミの声、鳥の鳴き声、木が揺れる音など。今居る環境の真ん中にわたしがいて
お互いに生かされているという双方向のつながりを覚える。まわりに受け入れられている
感覚は穏やかでいいもの。しばし、その気分を味わう。               

刈り払いは今日は休み、そのかわり薪を割る。エイヤっと振り下ろした瞬間、脳の血管が
切れそうな力がこもる。これは高齢者にあまりオススメ出来ないかもしれない。かつて森
林療法の「運動療法」のひとつに薪割りが存在したようだが今は推奨されていないことと
関係があるだろうか。
                         
  
小屋はうす暗い。でもこの暗さはとても落ち着くものだ。
薪も実はもう十分。あとは裏に積もう。

空港から林へ。そして途中の畑。

Tさんグループ。

目に優しい道になった。

フットパスのササ刈りと薪割り         7月9日(土) くもり 15℃

週末は、まず小屋の周りとフットパスで「雑草」の刈り払いをすることで始まる。義務で
もなし、奉仕でもなし、やりたいと思うように仕掛けられているといえばいいだろうか。
雑草を刈り込んでいくことは、スピリチャルで癒しである。             

今日は、再び長男を巻き込んで薪割りを手伝ってもらい、わたしはフットパスの刈り払い
に専念した。今年は草の伸び方がいつもと違う。すくすくとハイスピード。蚊はいない。
刈り払う、いわゆる「雑草」と呼ばれてしまう草木は、頻度の多い順から、ミヤコザサ、
チョウセンゴミシ、フッキソウ、フタリシズカ、ツタウルシである。このうちチョウセン
ゴミシとフッキソウとツタウルシは木であり、フッキソウは刈り払ったとたんに芳香に近
い独特の香りが一面に立ち込める。ツタウルシは先先週来、わたしの体にかゆいぶつぶつ
を作っている。                                 

長男は固いアズキナシに難儀しながら、それでも黙々と小山を片付けた。割った薪はわた
しも一緒にログの壁に積んだ。いい加減な積み方だけど、いい加減というのが長く続く秘
訣だなとしみじみ思うこの頃。あとは、雪が降るまでわたしが楽しみながら割ればいい。

小屋のノートには札幌から原口さんが見えた足跡があった。             

  
新しい薪は古い薪の手前に積んだ。親子のいい加減さがでてしまったバラバラ加減。
子は今夜も筋肉痛になるはず。







見慣れた風景だが好もしい

アプローチを振り返る

刈り込んできた道も振り返る

なんとも奇怪なわが出で立ち



冥想テラス             7月2日(土) はれ 24℃       

「奥のささみち」を刈る。フットパスの刈り払いによって腕とおなかにできたウルシかぶ
れの症状は経過がよく、沈静化に向かっているので、今日の作業ファッションは、長老の
アドバイスに従って、ツナギを素肌に着て長袖をそのまま利用。カッターワイヤーの調子
が悪く、濃いササのところで難渋する。昼過ぎに終えて戻る。            
 昼食前に冥想テラスにマットを敷いて、20分ほど冥想。セミの声、鳥のさえずり、林
を抜けるそよ風、そよ風によるはずれの音、テラスの下にあわてて隠れたカナヘビの気配。
それらを全身で感じつつ、万物のつながりのなかで生きている自分を意識する。上空は羽
田・札幌間のジェット機。                            

間伐したところにおびただしいササが出てきた。陽光が差してくると
いつも休眠していたササが目を覚ます。

ウルシに懲りてツナギを着る。

今週のヨガマット木漏れ日風景。
ホームセンターで780円の品だった。



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