林と積極的に関わる

NO.40

2006/11/04〜 うれしい。林の手入れをすることが出来て幸せである。 世の中の役に立つ、などといえる代物ではないが、 与えられたゾーンを静かに許された範囲で手入れが できること、そしてそのお土産に、本や世間では 学ぶことのできなかった素顔を見せてもらい、書き綴る。 この林で得た言葉が、独りよがりでなく人に通じる、 ということをこの頃知り始めた。




存在感のある潅木なので残した

それをこんな風に整枝

アカシヤの丸太
イヤシロチづくりへ GO! 12月30日(土)はれ マイナス5℃           

8時前に家を出て今年最後の山仕事にくる。2日目は体が軽い。昨日も今日も随分と仕事が
はかどった。今シーズンはツルのからんだアカシヤ林から始めたためにこれまでは間伐の
醍醐味をほとんど感じることのない地味な、どちらかというと苦役だった。徒労にも近い
寝技のような仕事であまりの遅さには焦燥感を伴ったが、ここまで来て見ると、無駄では
なかったなあ、と思う。ツルにからまれ、込み合い、暗い林は半べそをかいていたのだが、
今、ようやく笑い始めたのがわかるからだ。

年明けはさらにプラス思考の森づくりにステージが変わる。今回の数日間の仕事は本当に
意味があった。よかったよかった。

今年も実にいい年だったと思う。色々な方々と胸ふくらむ出会いがあり、感謝する機会が
とても多かった。目だったことはこの数年、一段と奉仕する役目が増えてきたこと。これ
はある意味では画期的なことである。自分のことが後回しになることも多く、焦ってしま
うことも少なくなかった。しかし、これは修行だと思う。

来年はもっと社会が明るいきざしを感じられるよう、各々の場で恐れずに生き方を変えて
いかねば。仕事を終えて一輪車を押して小屋に戻りながらそんなことを考えた。

好きな木漏れ日の広場          あたりはこんな風になった


切り倒した木の枝とツル

それらを切り倒すと空はこんな風になる
作業の雑念    12月29日(金) はれ 風あり 0℃――3℃           

今日から年末年始の休みに入った。いつもどおりの時刻に起きると一日が使えて豊かな気
分になり嬉しい。娘が昨日帰省。希望するところへの就職がようやく内定したので、やや
ほっとした表情が覗く。そんな、年の瀬。

林道に雪はないが凍りついて鏡状態。ストーブは薪を焚きつけてからゴーッという燃焼を
確認してからストーブの扉を半開きにし、9時、さっそくチェンソーなど一式を一輪車に積
んで林の現場に入る。フットパスを新しい複数の鹿の足跡がある。1時間後にストーブの様
子を見に来ると10℃、昼ごはん字には24℃だったから、薪ストーブの扱いはこれで万全と
言える。

道の両側を全般的に抜き伐りしていくことにしよう。そうするとフットパスの歩く環境整
備は全線にわたり一段落する。そのためにほぼ完成形のような強めの間伐を施し、風致的
にある程度のレベルを目指すことにした。そう、はっきりとイヤシロチを目指すのだ。思
えば今日はその初日だ。

作業しながら雑念を観察する。浮かび上がってくる雑念というのは、言霊の復讐である。
悪口めいた、ちょっぴり悪意のありそうな些細な発言をしたことに、わたしの良心が懸命
に取り繕おうとしているのだ。雑念が作業の邪魔をする。言葉にはこころがある。だから、
よい言葉を発し続けなければならない。

]
9時過ぎはこんな風景

昼、小屋に戻ると…

納戸の整理で出てきたザイル2本。寄贈。

こんな風に燃えれば文句なし。

帰途、風景は激変。
アカシヤにマメ科のにおいあり  12月23日(土)曇りのち雪 0℃〜3℃

素早く着替えて手自然の林に入る。ツルが絡んだアカシヤ、その先にツルに絡めとられた
コナラやサクラ、アカシヤの枯損木…。硬いアカシヤを何本も切っていると、ほのかにマ
メ科特有のにおいがした。これは大発見。それほど風がないのかも。今日は、集中力があ
ると思うが、それが臭覚にも及ぶとは。  

空腹に耐えられず、ブランチのために12時前に小屋に戻る。ちょうどそのころ、雪が降り
始め、本降りになってきたのだ。薪ストーブは燃えてはいるが、10℃以上に上がっていな
い。やはり、急速暖房としては大変困った代物だと総括する。

大雪を見て「よし、今日は午前に伐った樹木を所定の長さに切るだけにしよう」、と半分今
日の天気にあきらめつつもう一度出かけた。時刻は12時半過ぎ。気分はしかしヤル気満々
である。やがて雪はボタン雪にかわり、首筋に溶けた冷たい物が入り込んできた。ややし
て作業着のお尻の部分が濡れ始めていやな冷たさが感じられるようになってきた。だが、
林の美しさはますます増幅されてくる。降り積む雪のせいもあるが、そもそも、手入れし
ようとしている樹木たちが自分と対峙するひとつの個性に見えている。そういう自己主張
をしている。この時間に作業はやめるわけにいかない。

わたしは、以前もこのような風雪の墨絵的世界で自他一如の気分を味わったが、今日もま
さにそんな日和だ。このような風土体験は風土からのごご褒美だと思うのだ。ありがたい。
折角だからもう少し我慢してやっていこう…。と、思っているうちに、雪は大分小降りに
なってやがてやんだ。祈ってみるべきだ。

戻った部屋は23℃になっていた。素直にうれしい。このストーブの火力を上げるためには、
薪を入れる扉を開けてあげるとよいことがわかった。また、いくつかのヒント。
@炎を見る窓の部分にオキを集めて奥に薪を積むと燃える状況がいつも見える。
A薪の位置をよく動かしてみる。
B燃やすことと、見るステージを分ける。燃やすためには見るためには焚き口からの空気
進入を優先して火力を高めて燃やす。そのとき、サイドの通気口は閉鎖。
C初期の燃焼では、厳冬期の面倒さを解消すべく一発燃焼に専心。そのため、らくらく点
火のオガ炭を元に、新聞、カラマツの小枝(オキ火に不可欠)、木っ端、薪の順を手抜き
なくていねいに。
D耐熱ガラス側にオキをおいて、焚き口を塞ぎ、通気を窓に絞ると、通気はシューシュー
という音がする。

このようにすると、たかが薪だったその炎は、オーロラのように動き、炎の息が聞こえて
くる。

雪景色に埋もれる小屋

混合油を買って  12月16日(土) 3℃ 曇りのち晴れ           チェンソーの混合油を上厚真の農協で買ってから長老宅へでかけ、年の瀬の挨拶をする。 ハタハタの飯寿司とコーヒーをご馳走になる。                    剪定した庭のツルバラの枝を、折角だから燃やすことにした。油分が多いのかよく燃える から。刈ったオレガノ、クリサンセマムも一緒。乾いた薪と共に。           昼近くからチェンソーを使った。ツル切りと枯れたアカシヤを倒しているだけで作業はは かどらない。風景は間違いなく変わっているが、材は驚くほど出ない。ひと汗かいてスト ーブの前に座ったのは2時近かった。激めんと自分で握ったおにぎり1個。夕刻、札幌へ 向かい知人親子の出るミュージカルをしばし観劇。久々の文化・ゲイジツに触れる時間と なりそう。                                   

*デジカメの電池が切れており、林の画像が貼れませんでした。m(__)m             


note & kujira

approach to yamanokami

tannne baum

larch footpath
函館から戻って  12月10日(日)快晴 外3℃ 中マイナス3℃       小田島パーティのお土産がテーブルの上においてある。感謝!薪を補充しておいてくれる あたり、山小屋慣れしているさすが山の後輩だ。このちょっとした気遣いがうれしく気持 ちがよい。                                    先月、山仕事を始める時にすでに山ノ神の参拝を済ませていたが、明日12月11日の正 式な参拝日に出られないので、小屋に来る前にもういちどつたもり山林の山ノ神によって お参りしてきた。昨朝道南の上ノ国町へでかけ、夜は函館に出て今朝家に戻ったばかり。 今日は仕事せず、ただストーブのそばにいよう。先週は仕事の催しなどが重なってそこに 週末の移動だったからめまぐるしかった。やはり、週末のひとときは、雑木林の薪ストー ブで静かに過ごしたい。                              フットパスをめぐって来ても、薪ストーブの温もりが低調。これから冬の作業が心配だ。

sasa











若い山仲間からのメッセージ ・・・

(12月3日に小屋に立ち寄り、まほろば
コースを歩き薪ストーブで昼食の由)
■小田島君(注:WV部の後輩、昨年雑木林を訪問)に連れてきてもらいました。千葉の
庄司と申します。小屋での生活、雑木林の散歩と楽しませていただきました。鯨の佃煮を
持って参りましたのでご試食下さい。(…はい、確かにいただきました。既にほとんどが胃
袋に入りました。懐かしい味をありがとうね:草苅)

■同代の仲間3人でよらせてもらいました。小屋のストーブを囲んでの昼食のひと時、と
てもよい時間を過ごさせていただきました。散策ではまほろばルートの途中でリングワン
デリング、ちょっとしたスリルを味わいました。有難うございました。小田島
■しばし、黙然とす 常本







上ノ国町から函館   12/9 --10

(土曜日は道南に伺った。印象深い24時間だった。以下はその旅のメモ。)

朝7時30分糸井発の列車が5分遅れる。苫小牧駅で函館行きの特急に乗り継ぐ予定なのに、
今日に限って遅れておりこのままでは接続にならない。駅員に接続の連絡を頼む。家内に
も携帯で、駅に接続させるよう頼む。気持ちは駄目でも仕方ないが、そのときはそのとき
だ、然るべく連絡を取るだけ、と割り切っており、パニックとは大分違う状況だった。コ
ントロールされている精神状態。列車は、わたしが着いたときには特急も駅に着いたばか
りでどうやら連絡も入り、車掌は待っていた模様。辛うじてセーフ。

車内では、前夜のフォーラムの余韻がまだ残っており、困った状態であった。これからフ
ルに回転していかねば。しかし、ボーっとしている。これで大丈夫か?

八雲から江差まで約2時間、路線バスにのった。熊石に3月、フライに行くときの雲石峠
だ。地元は八熊(はちくま)峠と呼ぶらしい。途中、バスは八雲のシルバーの施設やらい
くつかをつないでいく。これは楽しい見学だ。町の息遣いがにおう。雪道を自転車に荷物
を載せて走る高齢者をバスはゆっくり追い越していく。熊石では一旦逆方向に走り漁港を
巡ってくる。なつかしい鮎川海岸を右手に見て南下した。乙部町、厚沢部と通って江差。

遠距離で乗っていたのは3人、そのうちの一人はヨドバシの袋を下げて熊石で下車、もう
一人は江差。途中、地元の方が乗っては降りる。長距離の路線バスとコミュニティバスを
兼ねるのだ。江差に近くなって乗った老夫婦は、パチンコ屋に向かった。病院へ入った方
もいた。

バスは八雲から江差まで2時間。2000円近い料金だ。なんとなく所持金の小銭に不安があ
り数えた。1775円あった。目的地に着いたとき正規料金は1780円と表示された。いやな予
感はぴたりとあたり運転手に聞く。
「一万円の両替はできますか?」
「それはちょっと」
「1775円ならあるんですが」
と5円不足の小銭をみせると、
「ああ、いいですよ」。
これから、初めて訪れる上ノ国町に、「ゴエンガナイ」ではすまない。さて吉凶はどうか


支庁の桐尾さん、加藤さんが迎えに来てくれていた。お昼に道の駅・もんじゅで工藤町長
のお迎えを受けた。ここで昼食をいただきながら、町長から前向きな興味ある話をたくさ
伺った。これから大いに期待される、地方を支えていく首長さんの一人だと思った。

あらかじめHPで町長の日記も拝見していたので、町長の話す内山節さんの話なども弾ん
だ。わたしも随分熟読してきたし、一度直接お会いしたことも会った。道の駅「もんじゅ」
の置かれた場所も、崖の上のイヤシロチだった。これからじわりと注目される。ロケなどを
誘致すると途端に名所になりそうなたたずまいだった。旧笹浪家へ案内してもらった。ヒ
バの香る家で、隣は八幡神社だった。丁寧にお参りした。こじれたエノキが複雑な思いをさ
せた。

育林コンペに参加していた懐かしい女性スタッフとお会いし一挙に旧交が広がる。

講演は不安の引きずる状態で突入した。が、テンションを揚げながら凌いだ。せっかく、
漁協の方々のどんぐり撒きつけの情報も得たのだから、昼食の時の実生苗の扱いについて
、もう一度お話すればよかった。わたしが話したい林のこころの恵みについてより、木を
植えるというベースの話をお伝えしたほうがよかったかな、と反省し始めたのは函館行き
のバスの中だった。

町長、もんじゅの眺め、八幡様、この出会いは吉であり、ゴエンはあり、と出た。めでた
し。よかった。

函館では、6時前にチェックインができたので、谷地頭温泉に電車で出向いた。せっかく
だから立待岬に向かったが途中から右手が暗い墓地になったので気持ち悪くなり戻ってき
た。表示のとおり温泉に向かったはずがいつまでも表示がなく、山の上の料理屋についた
。間違ったのだが、夜景がよく見えたので写真を撮った。

やり直してみると、矢印の読み違えだった。茶色ににごった温泉にタオル120円、入浴料
390円を払って入る。途中の電車の移動・約15分も楽しい。

30分弱を温泉にいて、街中に戻る。結局大門のなかのバルにした。明日は早朝、ホテル
の出す朝食券で朝市で食事して7時の特急に乗る。

ホテルはインターネットの設備がなく、PCを持参した意味が半減。SNSへの書き込み
ができないのは残念。携帯に懐かしい先輩のメールが転送されてきてすぐ返信したいが
それもできない。1階に有料HPがあったので開いてみたが、パスワードを打って数行
書き込んでいたら突然時間が来て切れてしまった。頭にきてやめてしまった。やれやれ。



目線を1m落とすと落ち葉は表現力を
持ってくる。この一年、林のこと、わたし
に何かを語りかける

冥想テラス。絶好な状況は年に数回し
か出会えないが、自分と風土がつなが
っている感覚は、こういう場での冥想が
きっかけとして発見できる

初冬であることを認識させる


お客さん攻勢  12月2日(土) 晴れのち曇り 0℃

見えるもの全てが美しく見えるときがある。雪が降る前の林のたたずまいはもちろん、落ち
葉、水溜りの氷、毎週見る小屋さえも今日はいつもよりずっと光り輝いて見えた。小屋に向
かう車のなかで、わたしは、どこか、感謝したい気分が高まっていたのだった。その結果が
、この風景と感覚である。立ち止まって反芻せざるを得ない。

今日もツルに絡めとられて半分息をとめられそうな木々を間伐して薪用の135cmに切り
整頓した。11時過ぎ、水飲みと薪補給に小屋に戻る時に、ホッホッホッホッホッと裏声を
発すると、声はカラマツの林に教会のように響き渡った。快い音の響きだ。

1時に仕事を終えて道具を一輪車に乗せて戻った。着替えをしてズボン下ひとつになってい
ると、「○○会社のものですが、現在地を教えてもらえませんか」と若者と年配の方がやっ
てきた。ズボン下姿で応対すると、旧知のNさんだった。何10年も前からお世話になった
会社である。「良かったら、どうぞ」と招きいれて歓談、わたしは遅い昼食を始める。
社長のGさんもやってきて、山仕事のパートナーである長老も作業に来た。しかし、このメ
ンバーが集まれば旧交を温め始めるに決まっている。案の定…

ストーブを囲みながら、思い出話が展開する。こういう時間は最近あまりない。以前はふん
だんにあったような気がする。こうして人々はさほどあくせくしないで、適当に息抜きして
いたのだと思う。あの頃は良かった、というが、そこはいつも気持ちひとつ。

小屋のお客さんが続く。明日も山仲間の後輩が友人を連れてくるというが、所要でわたしは
お相手ができない。このペースで来客がくると仮定すると、恐らく山仕事はストップする。
しかし、出会いの時間も魅力的だ。ひょっとすると、昼過ぎまでは山仕事、遅い昼食からス
トーブセラピー、という時間割になるかもしれない。それはそれで、いいパターンかも知れ
ない。
林の風景の縮図。いつも絵が違う









日だまりではもう雪は解けていた
ついに雪が来た  11月25日(土) 快晴 0℃

千歳あたりから札幌にかけて、24日は荒れ模様で雪が降ったようだ。出張先の伊達から
苫小牧方面に戻る時、白老あたりまでは快晴なのに東の方は厚い雲がかかっていた。苫小
牧西インターから札幌まで高速は閉鎖したという。このように胆振地方は石狩とは天気が
違う。恐らく、その雪が苫東の雑木林にも少しかかっただろうなと予想して出かけた。案
の定、4,5cmの雪が積もって林は白い世界に変わっていた。

薪ストーブは、炎は見えるのになかなか熱くなってくれない。じれったい。役立たずのよ
うにも見えてくる。20分ほど経ってもストーブを手で触ってみて、ぬるい感触に不安に
なる。このリズムにイライラしても仕方ないので、作業の準備をする。久々に目立ての棒
やすりを代えてみた。すごい。今までのなまくらは何だったんだ。チェーンから金属の粉
が散っていくのが見える。怠慢、マンネリ、不作為、無頓着。これではいけない、と猛省
した。

林はふんわりと積もった雪が、わずかな風で揺られて落ちている。日差しが明るくて気持
ちよい。アカシヤの枯れ木、つるの絡まったカラマツ、萌芽しているイタヤカエデなど、
除伐する。チェンソーの切れはとてもよく、切りくずのチップが最近ないほど大きい。や
はり、こうじゃなくてはいけない。

先週から手がけているところは、アカシヤが生えている50m四方ほどの斜面と低みで、
とても荒れた感じがする。恐らくは、なにかで裸地になったところに、このアカシヤが入
り込んだものだと思われるが、アカシヤはやはりほかの植生を寄せ付けない他感作用(ア
レオパシー)があることがわかる。笹とホザキシモツケがややある程度で、他の植生はと
ても貧弱である。そこへアカシヤの寿命が短く枯れていくので、一帯は荒れた風景になる
のだろう。なかなか風景は変わらず、徒労感のつのる仕事だ。

防寒靴の中が濡れてきた。異様に冷たく、靴下はビチョビチョになって気持ちが悪い。我
慢できなくなって11時半には作業をやめた。それに12時に女性のお客さんがお二人見
えるので、高速の高架下まで迎えに行くことになっているのだ。

ふたりは全く別々のつながりで来られたので、3人顔をあわせてから簡単に互いに紹介し
あって3台の車で小屋に来た。フットパスを案内する時に、お一人の女性の横顔に見覚え
がありたずねると、7,8年前の英会話教室で2,3回ご一緒した方だった。もうお一人は
、2年前、ホームページをご覧になってこの雑木林とわたしの営みに関心を寄せていてく
れた方で、ソーシャルネットmixiに入る際に招待状を出してくれたという不思議なご縁で
ある。とても前向きな生き方と自然に対する感性をおもちだった。

フットパスを一巡りしてから、薪ストーブを囲んで話の続き。ややして昼食をとる。スト
ーブはようやく部屋をちょうど快適な温度まで暖めており、今度は感謝したい気分だ。刺
々しい熱さでなく、あくまでも優しく柔らかい。お客さんの二人に炎の見える側に座って
もらって、歓談していると時間が経つのを忘れた。おそらく、薪ストーブのおかげもある。
人をここでもてなすなら、2時間前に来て暖めなければならないが、それが、何よりのも
てなしになるのかもしれない。


長老と林を語る

OBとT君一行

まほろばコースから戻る二人

山仕事を終えて






今年の山仕事始まる  11月18日 快晴 6℃

いよいよ、山仕事を始める。南千歳で、先日下見にやってきた法制大学のT君一行をピッ
クアップし、小屋へ。今夜の宴の用意を手伝ってもらいながら、わたしは薪ストーブをて
いねいに着火、ついでに外の焚き火の準備もしておく。

そこへ長老が今年の作業エリアの打ち合わせにやってきた。4人で「まほろば」の分岐ま
で行き、間伐の度合い、作業路の場所、土場などを大体決めた。フットパスの周辺と内側
がこれですべて手入れされることになる。帰りはフットパスを使って林の様子を見ながら
戻ったが、小屋へ通じる最もポピュラーな道を長老はまだ歩いていなかったらしく、珍し
がっていた。

焚き火を囲んでカップ麺とおにぎりを頂く。小春日和だ。ほどなく、青年寄宿舎のOBで
ある大川、成田の両君が到着。今日は、OB3人の邂逅をT君が録画し、青年寄宿舎のド
キュメンタリー作品の素材にする、という趣向だ。わたしたちはただいつもどおり出会い
を懐かしみ、飲み、語っていれば良い。

わたしはチェンソーの目立てをし、燃料やオイルを装てんしてから現場へいく。分岐の周
辺はツルに絡めとられた、少し疲れた林になっているうえ、カラマツなどはかなりこじれ
ている。林がよく育つところか、といわれればそうではない、と答えたい所だ。そこの、
疲れた部分に少しずつ手を加えるのだ。次第に変わっていく様が目に浮かぶ。T君はわた
しのそんな作業を遠巻きに撮影していた。OBはまほろばのナチュラルトレイルを歩く、
といって林に消え、40分ほどで無事戻ってきた。

3時過ぎ、斜め光線が美しくなって、早速今宵の宴を始める。成田君はわたしがファック
スした素材案をそのまま取り上げてくれたので、ビールはドイツとベルギーの濃厚なヤツ
ばかり揃えてくれた。そしてスタートはカニ。大降りのものが2杯。さんま、イカ、ホッ
キ、ホタテ、ししゃも。野菜もたっぷりに、肉は少々だった。さすがに海の人だけあり、
海の幸満載だ。7時ころ、小屋に入り薪ストーブの前にザを移した。大川氏はまもなく眠
りだした。わたしは気づいたら、朝7時だった。こんなに一発で眠ったのは久々だ。

不思議な縁、楽しいこころが和む一夜だった。

 
濃厚なビールとカニ。これで宴は始まった。

宿泊者のメッセージ
●アミラーゼをベースにしたストレスチェック、昨日に比べ、5人とも増大。こころの
ありようは変わらないように見えるが、さて。朝、ポトフをご馳走になりました。(お)
●素晴らしい自然とおいしい空気、温かい人のもてなし。いろいろ、ありがとうござい
ました。自分を見つめなおすきっかけになりました。(菊)
●星の光しかない世界で、初めて宇宙を見ました。ソレと同時に、人のすばらしさと
ドキュメンタリーのもつ力を感じました。合掌。 (と)
●ひさしぶりに自然に囲まれた場所での一日を過ごさしてもらいました。ストレス度が
非常に高い数値であったのが残念ですが、今後は減らすよう、生活を見直していくつも
りです。また、ポトフもたいへん、おいしかったです。ありがとうございました。(な)



ビールなど供える

ああ、晩秋。葉は全て落ちた

マイタケだああ!

傘差してフットパス

今年の間伐予定地。ツルに絡め
られて倒れている図
一ヶ月前の山の神  11月11日(土) くもりのち雨 6℃

来月の山ノ神の日、つまり12月11日は月曜日、その前の土日は上ノ国町に出かける
ので、いつもの12月の山ノ神の参拝ができない。そのため、思いついて、参拝の準
備をしてきた。間伐の届出の手続きが済んで、いつでも着手できることもその理由
だ。チェンソーを使う仕事の前に、安全祈願はしておきたいものだ。ドイツのビー
ル「ビュルテンブルガー」と札幌のエビスの黒、新米、塩、うるめいわし、ホタテ
の貝柱を備える。たっぷり祈る前にこの一年近く、わたしだけでなく家族、親戚、
関係者がみんな無事で健康であったことに感謝する気持ちが自然にでてくる。

天気が危ない。今日は薪ストーブの煙突掃除の日だ。寒くなってからの故障はたま
らないもの。事前に煙突をきれいにしておこう。煙突掃除用のタワシ状のキットも
先日手に入れた。固定している針金をすべてはずして、煙突を抜き、最後は外の煙
突の曲がりも点検。結構、独りでは面倒な作業だ。そこへ、見知らぬ軽自動車の中
年夫婦がきて話しかけてくる。酒臭い、人のいいおじさんと、夜のお勤め風のおば
さん。小屋の前のきのこ、ピザ釜など、見慣れないものをひとつずつ質問し、おじ
さんは、林道の出口やぬかるみは大丈夫か、とか話しかける。「ごめんねえ、煙突
掃除でゆっくり相手できなくてえ」と動きを止めずに、できるだけ応える。雨が降
ってきそうで焦りもあるし、作業自身がちょっと神経を使うのだ。外、2階を何度も
往復し、急な階段から落ちないよう気をつけねばならない。でも、相手していない
のがちょっと後ろめたい。

1時間あまりで掃除を終えた。中年カップルは、お礼を言って帰った。ちょうどその
ころとうとう雨が降ってきた。わたしはどんよりした雨空の雑木林へ傘をさして出
かける。

この数日、わたしの頭にはある執着があり、脳裏から離れなかった。怒りでも憎し
みでもない心の動きなのだが、朝の冥想のときにそのことの「なぜ」を自らに問い
かけた。答えは簡単に帰ってきた。わたしの発想に「愛が欠けている」というのだ
。わたしは直ちに理解した。そして執着はすぐ消えた。わたしは雑木林のフットパ
スを歩きながらそのことを考えていた。

林はこの1週間で完全に葉を落とした。カラマツも全くの裸木になった。 

ストーブの炎を見ながら横になる。息が深くなって
恍惚の時間が流れる。眠らなくとも疲れがとれる、というセラピーモード。






熊本の、T君   11月4日(土) 晴れ 14℃

話せば長いのですが、私が学生時代の4年をお世話になった北大の青年寄宿舎(植物園の北、
道路向かい)が110年の歴史を1年前に閉じることが報道された時、ある若いドキュメン
タリー製作者が、閉舎の日記を書いたわたしのブログにアクセスしてきました。

それがT君です。

http://green.ap.teacup.com/hayashi-kokoro/

かれは東京にある、熊本県の学生寮・有斐寮の存続に関わるドキュメンタリーフィルムを作
り世に問い、そのおかげで、有斐寮は存続再生することになったという経過があります。そ
して彼のフィルムはその原動力になったと高く評価されているようです。

かれは3日の舎生OB会を傍聴し、4日はわたしの関わる雑木林をも見に来ました。青年寄
宿舎のドキュメンタリーフィルムを作るために、下見に来たものです。

静かで、礼儀正しく、控えめで、しかし自分の意見を持ち、それを上手に表現する力があり
、社会の流れに関心を持ち理解し、目線が温かく、よく勉強しており、風景の意味も看取し
、それに加えて、雑木林でわたしが得ているスピリットにしっかり呼応していました。

自然体で積極的に生きる若者。はじめて来たという北海道、ひとびと、雑木林の風景が、こ
れの心にどう刻まれたのか。





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